ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

金融・保険

真の失業率──2016年6月までのデータによる更新

完全失業率によって雇⽤情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発⽣することで、完全失業率が低下し、雇⽤情勢の悪化を過⼩評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる⽅法で推計した…

期待インフレ率の低下

このところ、期待インフレ率の低下が指摘されるようになった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の試算によれば、2015年12月の期待インフレ率は、日本銀行による「量的・質的金融緩和」の導入以降最低の水準とのことである*1。内閣府『消費動向調査…

藤井彰夫『イエレンのFRB 世界同時緩和の次を読む』

イエレンのFRB 世界同時緩和の次を読む作者: 藤井彰夫出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2013/12/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る※記述の誤りを修正し、注記を追加しました。(02/23/14) いわゆる「三本の…

貨幣的側面からみたこのところの経済の動き

このところ、日銀による量的・質的金融緩和が物価と賃金にどのように反映されるかが世間の注目を浴びており、物価が上昇しても賃金は上昇しないのではないかという懸念が指摘されている。この点をいくつかの指標から占うこととするが、まずは、マネタリーベ…

池尾和人『現代の金融入門【新版】』

※本文に追記し、注を追加しました。(04/14/12)現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)作者: 池尾和人出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/02/10メディア: 新書購入: 21人 クリック: 300回この商品を含むブログ (47件) を見る 金融取引、銀行システム、企業…

米国の「日本化」?

最近公表された米国のSNA統計をみると、米国経済は、このところ踊り場的局面を迎えつつあり、雇用については、しばらくは厳しい情勢が続くことが見込まれている。実質GDPの対前期比は0.3%の増加であるが、消費の伸びはゼロとなっている。 一部では、…

ラグラム・ラジャン『フォールト・ラインズ 「大断層」が金融危機を再び招く』

フォールト・ラインズ 「大断層」が金融危機を再び招く作者: ラグラム・ラジャン,伏見威蕃,月沢李歌子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/01/18メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 80回この商品を含むブログ (16件) を見る 本書は、グリースパンがFRB議…

貨幣面からみる日米経済

2月16日のエントリーでは、経済の実物面(実質GDP)の今後の予測から、雇用情勢が今後どのように推移していくかを予測した。今回は、2月14日に公表された2010年第4四半期のGDP速報をもとに、日本経済を貨幣的側面からみるとともに、米国のデータと比較…

ヌリエル・ルービニ、スティーブン・ミーム『大いなる不安定 金融危機は偶然ではない、必然である』

大いなる不安定作者: ヌリエル・ルービニ,スティーブン・ミーム,山岡洋一,北川知子出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2010/10/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 68回この商品を含むブログ (14件) を見る 2008年秋以降に顕在化する金融、経済危機…

四半期別GDP速報

昨日、四半期別GDP速報が公表されましたので、いつものグラフを3点セットでみていきます。今回は米国から。 米国経済は、貨幣経済面からみれば堅調に回復しており、デフレ懸念も概ねおさまりつつありますが、雇用の回復ができていません。実質経済成長率…

ビークルとしての中央銀行

※脚注を追加しました。 柄谷行人『世界史の構造』への感想の中で、以下のように記述した。 金本位制の時代とは異なり、現代の世界貨幣である主要通貨は不換紙幣である。それは、その素材そのものに価値はないが、国家の負債としての裏付けを持つものである。…

日本経済の「正常化」──その後

2010年第二四半期のGDP一次速報が公表されました。実質GDPは0.1%(年率0.4%)の増加となり、事前に予想よりも低い伸びとなっています。 また、需要項目別の寄与度をみると、外需(純輸出)はプラスを維持したものの、消費や投資など内需はマイナスとなりま…

デフレ脱却に向けた対応

※文章を適正化しました。(05/27/10) 前回に引き続き、デフレについて、日米のデータを比較しながら分析します。なお、「デフレ」の定義については、「物価下落が2年以上継続している状態」をさすのが一般的ですが、ここでは、より広範に「持続的な物価の…

「正常化」に向かう日本経済

※注記を修正(岡田、浜田論文についての記述を追加)しました。(05/26/10) ※追記を追加しました。(05/24/10) 2010年第一四半期のGDP一次速報が公表されました。実質GDPの上昇率は年率4.9%の増加となり、事前に予想されたとおり、高い伸びとなっています…

思考実験:デフレ下の所得維持は重要である

※注記を追加しました。(11/26/09、12/02/09)また、不必要な留保を削除する等文章を修正しました。(11/27/09) デフレ下において、いち早く所得維持の重要性を指摘したのがロナルド・ドーアである。 もう1つの「合成の誤謬」は賃金カットである。市場不振…

日本経済の実物的側面は改善する一方、デフレの定着は明確に

※貨幣数量方程式に基づいた寄与度分析のグラフを差し替え、文章を修正しました。(09/12/04) 本日、7〜9月期の四半期別GDP速報が公表されました。実質GDPは1.2%(年率4.8%)の増加となり、予想を上回る高い伸びとなりました。特に、前四半期まで…

貨幣数量方程式を用いたインフレ率に関する分析─続き

※このエントリーは、公開を停止します。ここでは、修正貨幣数量方程式を「マネーストック×貨幣流通速度=国内需要デフレーター×国内需要財+輸入デフレーター×実質輸入」として分析を行いましたが、国内需要財に輸入を加えると、輸入がダブルカウントになり…

貨幣数量方程式を用いたインフレ率に関する分析

※このエントリーは、公開を停止します。ここでは、修正貨幣数量方程式を「マネーストック×貨幣流通速度=国内需要デフレーター×国内需要財+輸入デフレーター×実質輸入」として分析を行いましたが、国内需要財に輸入を加えると、輸入がダブルカウントになり…

一上響、代田豊一郎、関根敏隆、笛木琢治、福永一郎「潜在成長率の各種推計法と留意点」(日銀レビュー)

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j13.htm 先日のエントリーでは、潜在GDPを推計し、現実のGDPとの違いを時系列的に比較しました。潜在GDPの成長率は、ここでは「中長期的に持続可能な経済成長率」である潜在成長率を意味しています。こ…

流動性をめぐって──竹森&クルーグマンの議論から

※注記を追加しました。(09/28/09)(前回のエントリー) 竹森俊平「資本主義は嫌いですか それでもマネーは世界を動かす」 先日のエントリーでは、竹森俊平「資本主義は嫌いですか」の第1部の内容を整理するとともに、今後の世界経済と我が国経済の行く末…

竹森俊平「資本主義は嫌いですか それでもマネーは世界を動かす」

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす作者: 竹森俊平出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2008/09メディア: 単行本購入: 14人 クリック: 153回この商品を含むブログ (79件) を見る※若干修正しました。また、平家さんのコメントを受け…

「米国経済でコストインフレと製品デフレが同時進行 〜所得流出・マージン縮小で景気下押し圧力増大へ〜」(日本総研リサーチ・アイ)

上述の竹森本感想では、コストインフレやそれにともなう交易条件悪化の懸念に関する記述は省略していますが、この点に関し、現時点までの動きを反映したタイムリーなレポートがありましたので、紹介します。http://www.jri.co.jp/thinktank/research/eye/200…

FRB議長

バーナンキ氏を再指名。http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11165120090825?sp=true http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11163320090825?sp=true 「バーナンキ祭り」からはや4年、か。http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/200510…

潜在GDPの試算

ある日銀関係者の潜在GDPに関する話が話題になっていたので、試算してみました。*1計算は、GDPギャップを推計する際に比較的標準的に使用される生産関数アプローチによるものですが、各種の仮定をおいた独自推計です。稼働率調整は、非製造業の資本ス…

「デフレ」の意味するもの−補足

08/05/09付けエントリーにid:himaginaryさんからトラックバックをいただきました。http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20090819/behold_nominal_gdpこの中に「名目GDPを国内需要デフレーターで割ると、実質GDIにほぼ等しくなる」との指摘があります。こ…

(号外)日本も再び物価低下局面へと再突入

※追記を追加し、数値を改訂しました。(09/08/18) 先日は米国のSNA統計を紹介しましたが、今回は日本についてみてみます。日本の場合、国内需要デフレーターは2006年頃からゼロ近傍で推移しましたが、2009年に入り、再びマイナス(よって、下図中の民間…

「デフレ」の意味するもの、あるいは経済の実需的側面と貨幣的側面

前回の続きです。*1ブックマークに指摘されていますが、国内需要デフレーターがマイナスになっただけではデフレと「定義付ける」ことはできないというのはそのとおりで、継続的な物価の下落(あるいは、それにともなう景気の後退)があって、はじめてデフレ…

(号外)米国経済は事実上のデフレに突入

先月31日に米国の2009年4〜6月期GDPが公表されました。市場の予想を上回る水準となったことが、世間の好印象につながっているようです。http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00160189.html ところが、GDPデフレーターはプラスが維…

米国の貨幣流通速度は引き続き低下

(前回のエントリー) 経済指標からみた米国経済と「流動性の罠」 米国の貨幣乗数の低下について 昨日、米国における2009年第1四半期のSNA統計が公表されました。実質経済成長率は、▲1.6%(年率▲6.1%)と3期連続のマイナスとなりましたが、民間最終消…

オークン法則による完全失業率の見通し──実質GDP成長率改訂の反映

既に報道されているように、内閣府による平成21年度政府経済見通し暫定試算*1と、日銀の経済・物価情勢の展望(2009年4月)*2が公表され、2009年度の実質GDP成長率がともに改訂されました。 実質GDP成長率とオークン法則によって、2009年度の完全失業…