備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

雇用システム

八代尚宏『労働市場改革の経済学 正社員「保護主義」の終わり』

労働市場改革の経済学作者: 八代尚宏出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2009/11/20メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 76回この商品を含むブログ (13件) を見る 八代尚宏『労働市場改革の経済学 正社員「保護主義」の終わり』では、「労・労対立」を…

本田由紀「教育の職業的意義──若者、学校、社会をつなぐ」

教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)作者: 本田由紀出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2009/12/01メディア: 新書購入: 13人 クリック: 286回この商品を含むブログ (63件) を見る 本田由紀「教育の職業的意義」では、日本の学校教育制度…

今村仁司「近代の労働観」

近代の労働観 (岩波新書)作者: 今村仁司出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1998/10/20メディア: 新書購入: 9人 クリック: 222回この商品を含むブログ (25件) を見る 今村仁司は、近代の労働観を古代のそれを転倒する形で生じたものとみる。 古代の労働観では…

人的資本論と内部労働市場論(2)

※文章の追加、修正等を小幅に行いました。(10/16/09)(過去のエントリー) デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(1) デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(2)──市場と商品…

人的資本論と内部労働市場論(1)

※注記を追加しました。(09/10/09)(過去のエントリー) デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(1) デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(2)──市場と商品 デヴィッド・マー…

完全失業率急上昇の「主犯」

※注記を追加しました。(08/31/09)※本稿では、エコノミスト的な「お約束」を踏まえた論説に対し、エコノミスト的な「お約束」を踏まえた立場から批判を行ったつもりです。一方、一部のブックマーク・コメントや本稿を引用したサイトの中には、こうした「お…

日本の雇用システムの柔軟性とその弊害

※追記を追加しました。(09/06/10) 先日のエントリーに関連して─というか、「チンピラ」(爆)のことは無視して─日本の雇用システムについて、もっとまじめに考えてみることにしましょう。先日も紹介した大内伸哉「雇用はなぜ壊れたのか」から、別の一節を…

日本の賃金制度──考えるためのひとつの補助線

下は、稲葉振一郎「労使関係史から労使関係論へ」からの引用です。 高度成長期の労使関係の一局面に例を採って、この仮説の試運転をしてみよう。興味深いことに、先述の戦後的特質は高度成長化の企業と産業の急速な合理化にとって機能的に作用した。ここでは…

いまあえて、完全失業率がそれほど悪化しない可能性を考えてみる

雇用情勢については、昨年末からの実質GDPの急激な低下と、それがV字型に急回復する可能性が低いことを受け、2009年度以降、急速に悪化することが予測されています。この点については、3月末の経済財政諮問会議における岩田一政議員の「どう考えても7…

小池和男「日本産業社会の「神話」 経済自虐史観をただす」

日本産業社会の「神話」―経済自虐史観をただす作者: 小池和男出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2009/02メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 91回この商品を含むブログ (21件) を見る 日本の文化は「集団主義」である、日本の賃金制度は年功序列…

鍋象=Bewaad方式「真の失業率」の補正(メソドロジー)

(前回のエントリー) 田中秀臣「雇用大崩壊 失業率10%時代の到来」 さて、本書の冒頭では、就業意欲喪失効果を考慮して本来の失業率はいかなる水準にあるかを考えたとき、公表失業率を約2%程度超過する可能性を指摘しています。雇用大崩壊―失業率10%時代…

田中秀臣「雇用大崩壊 失業率10%時代の到来」

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)作者: 田中秀臣出版社/メーカー: 日本放送出版協会発売日: 2009/03メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 116回この商品を含むブログ (51件) を見る まずもって、書名と本書の内容はミスマッチです。ということ…

戦争よりもバブル──フリーターの数を減少させるもうひとつの方法

最近読み応えのあるエントリーが増えているこちらのブログから。 正規へ(再・2008・10・30)(ゲンダラヂオ) 本稿の最も重要な発見として、非正規雇用としての離職前2年から5年程度の同一企業における継続就業経験は、正社員への移行を有利にすることが明…

デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(3)

雇用システムの理論―社会的多様性の比較制度分析作者: デヴィッドマースデン,David Marsden,宮本光晴,久保克行出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/05メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 62回この商品を含むブログ (10件) を見る(過去のエントリー) デ…

デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(2)

雇用システムの理論―社会的多様性の比較制度分析作者: デヴィッドマースデン,David Marsden,宮本光晴,久保克行出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/05メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 62回この商品を含むブログ (10件) を見る※付注を追加しました(02/…

デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(1)

雇用システムの理論―社会的多様性の比較制度分析作者: デヴィッドマースデン,David Marsden,宮本光晴,久保克行出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/05メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 62回この商品を含むブログ (10件) を見る 周知の事実であるが、企…

春闘と今後の日本経済の行方

※このエントリーは現在書き直し中であるため、公開を一時停止します。

ワーク・ライフ・バランスに関連して(レジュメ風)

自分の頭の整理のために作成したものの、何の役にも立たなかった資料ですw

いわゆる非正規雇用はいつから増加し、そして足許ではどうなっているのか?

02/28付けエントリーにおいて、次のように記述した。 企業行動に関連して、非正社員が増加している理由を問う調査は各種あるが、そのほとんどは、近年の非正社員の増加は、(高度情報化等に伴うものとするよりも)コスト削減のためであるとする回答がほとん…

労働者派遣事業について

1.労働者派遣事業の概要 労働者派遣事業は、1986年に法律によって新たに認められた雇用形態であり、雇用契約を締結する事業主と指揮命令を受ける事業主が異なるという、それまでの雇用形態にはなかった特徴を持っている。労働者と雇用契約を結ぶ労働者派遣…

「生−権力」と日本の雇用システム

近代の福祉国家が人間を「生かす(=活かす)」ための権力(生−権力)を持つものであり、その「権力」は、規制する権力と異なり、他者との関係の網目から発生するものだというM・フーコーの見方は興味深い。このような批判は、長期雇用の仕組みを持つ日本の…

小池和男「仕事の経済学(第3版)」

仕事の経済学作者: 小池和男出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2005/02/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 38回この商品を含むブログ (22件) を見るコメント 小池和男の議論は、日本の長期雇用システム、特にその中で、大企業ブルーカラー層に特…

労働力人口変動の要因分解−構造要因抽出の試み

06/06/05付けエントリーでは、労働力人口(就業者+失業者)の変動について、(1)人口の高年齢化に伴う効果(人口構成要因)、(2)労働力需給の変動に伴う効果(労働市場要因)に分解したグラフを掲載した。この(2)の効果は、労働市場の環境に応じ、就業意欲を…

濱口氏の草稿(EU労働法政策雑記帳)

批判点を見つけるのは比較的容易。90年代不況に伴う「アンダークラスの創出」「就職氷河期」の問題をその前段であまりにも安易に構造改革路線、特にそこに実名で取り上げられている竹中平蔵氏のそれと結びつけ、その景気循環的な側面、特にマクロ経済政策の…

雇用慣行に関するメモ

上掲書の内容とも関わるが、下記の点については、(当ブログにおける論調を含め、)近年の雇用慣行をめぐる議論の中での盲点となっているように思われる。 長期雇用については、雇用の安定という主に従業員側のメリットが強調されるが、企業特殊的人的資本投…

長期雇用は変化しているか?

先日のエントリーに関しmixi方面にて議論があり、そこでの論点の1つに「解雇規制の緩和により、日本企業には(これまでの)長期雇用とは異なる新たな形態の雇用契約を志向する動きが生じるのか」というものがあった。ただし、あるアンケート調査結果をみると…

業績・成果主義とホワイトカラー・エグゼンプションについて

1.企業における「業績・成果主義」の実態について 断片的な情報に基づき、自分が考える一般的な「業績・成果主義」とは次のようなもの。 まず、月例給に比して賞与のウェイトを高めることで、企業・部門の業績がより給与に反映される。月例給については、…

ワーク・ライフ・バランスについて(その2)

12/07/06付けエントリーの続き。現実というのは唯1つしかない。(私の見ているこの現実と、あなたの見ているこの現実は違うというような話が正当化できるのなら別だが。)その現実を変える手法としては、①ある種の規範性に即して、あるべき姿へと一挙に変革…

ワーク・ライフ・バランスについて(その1)

日本キャリアデザイン学会のメルマガにある「キャリア辞典」(執筆者は荻野勝彦氏)において、「ワーク・ライフ・バランス」に関する連載が始まった。この言葉、2005年頃から急に使われるようになった言葉のようで、当初は少子化との関係で論じられることが…

田中秀臣「日本型サラリーマンは復活する」

日本型サラリーマンは復活する (NHKブックス)作者: 田中秀臣出版社/メーカー: 日本放送出版協会発売日: 2002/06メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 31回この商品を含むブログ (18件) を見る本書の内容 本書では、日本の「サラリーマン」を「戦前・戦中は企…