備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

小野善康「景気と国際金融」

景気と国際金融 (岩波新書 新赤版 (660))

景気と国際金融 (岩波新書 新赤版 (660))

第1章 国際金融−二つの側面−

  • ストックの資産移動では、それだけで各国の資産量を変化させることはないが、フローの貿易取引においては、財・サービスは受け取った時点で使い切ってしまうため、資産量が変化する。
  • 個々の製品の品質や価格競争力は、貿易パターンに影響を与えても、経常収支には影響を与えない(比較優位)。経常収支は、需要側の要因(現在と将来の生活のどちらを優先するか)と設備投資等の要因によって決まる。
  • ストックの面では、円建て資産の収益率とドル建て資産の収益率は、為替リスクを考慮すれば一致。「資金流出」の実態は、両国内の資産量は不変のまま、資産の構成が変化するのみ。

第2章 為替レートと景気

  • 為替レートには絶対水準と変化率という二つの側面がある。絶対水準は供給サイドの国際競争力に影響を与え、フローの側面を調整する。これに対して、変化率はストックの側面を決定する。
  • 当初の為替レートが過度に円安であれば、日本の経常黒字を加速度的に拡大。この状態が続けば、日本の対外資産がたまりすぎて使い切れなくなるため、円高修正される。この議論は、不況下のマクロ・ダイナミクスという新しい考え方を基にしている。
  • 不況期には、サプライサイドのいう物価下落による消費効果は働かずに、流動性選好が高まり財・サービスに対する貨幣の価値が高まる。現下の日本における不況の基での円高は、このようなメカニズムによるもの。不況期に経済の効率性を高めることは、余剰労働力を増やすのみであり、景気には逆効果。

第3章 経済政策の国際波及

第4章 国際化するバブルと景気

第5章 為替管理と円の国際化