ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

日本の「経済成長」をどう考えればいいか?(JMM 03/14/05発行)

概要

真壁昭夫:エコノミスト 経済成長は、労働投入量、資本装備率、生産性の3つの要素からなる。生産性の向上が我が国経済にとって重要なポイント。新技術開発で、他国に作ることのできない新製品を作り出すことで、経済を活性化できる。
中島精也:伊藤忠商事金融部門チーフエコノミスト 経済成長の余地はあるが、需要とのバランスも重要な要素(バブル期の成長予想の乖離による過剰設備)。成長を放棄することは、技術進歩という成長要因がありながら資本ストックの増加を断念することであり、生産性が上がらず国際競争力が低下することで、成長はゼロでは済まなくなる。
三ツ谷誠:三菱証券IRコンサルティング室長 資本主義はそのコアに飽くなき成長というDNAを組み込んでいる。この飽和状態を打破し、経済成長を実現する動力は、技術革新でしかない気がする。
山崎元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 行動経済学によると、人間の行動や意志決定にあって、効用や選好といった経済理論の基礎概念は、少なくとも既存の理論が要求するような種類の一貫性を持っていない。国単位の経済成長は低下すると考えるのが自然だが、技術進歩ややる気によって、向上する可能性も十分ある。
菊池正俊:メリルリンチ日本証券ストラテジスト 日本の潜在成長率は、実質年間1−1.5%程度。労働力の減少は避けられないが、情報化投資、規制緩和、産業構造の転換、対内国内投資、企業家精神の高まり等により生産性を高め、経済成長率を維持することは可能。
津田栄:経済評論家 潜在成長率による成長は可能であるが、構造改革が地域、企業、個人の間で格差を表面化させ、成長の恩恵を受けられない多くの者が出てきた。
金井伸郎:外資系運用会社企画・営業部門勤務 90年代の主な先進国の労働生産性の上昇率の鈍化は、製造業から相対的に生産性の劣るサービス分野への労働人口のシフトが一つの要因。これは、必ずしも経済合理性に反するものではなく、限界労働生産力により説明可能。限界労働生産力が労働生産性よりも低い場合、*1労働の追加投入は労働生産性を低下させる。リストラによる生産性改善が見込まれる工業分野では、限界労働生産力がマイナス。一方、サービス分野では労働生産性が低いものの、限界労働生産性がプラスないし相対的に高く、労働力が流入する。こうした認識の下では、経済成長に固執することは無理。

コメント 論者の視点は全て、現状が完全雇用であることを前提とした、中長期的視野にある。この点は、これらの発言の中で異質な金井伸郎氏の意見も同様。総需要の不足という短期的視点に立った成長可能性についてコメントしている者は皆無。金井伸郎氏だけは、理論的に経済成長ができなくなる可能性があることを正確に示唆しているが、他の意見は、経済成長に繋がるいくつかのチャネルを挙げている者もいるものの、概ね技術革新の向上に対する希望的観測を述べるもので、理論性に乏しい*2。加えて、そのことが需給ギャップを逆に大きくしてしまう可能性については、全く触れられていない。
なお、経済成長への固執を無意味とする金井伸郎氏の結論自体については、社会階層の固定化や「成長はゼロでは済まなくなる」(中島精也氏)という面があることから、賛同しない。

*1:F'(N)

*2:理論的な(マクロの)成長可能性については、03/22付けエントリーの元橋一之氏の論考など。