ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

小林慶一郎「インフレ政策の財政的帰結」(RIETI Discussion Paper Series)

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/02j005.pdf

1 Krugman Model

  • Krugman Model:代表的家計経済、効用関数:U=1/(1-rho)・ΣDt・ct^(1-rho)、Cash-In-Advance制約:p(t)c(t)<=Md(t)(Md:購入した貨幣)、生産の上限量yf(t)>y(t)、以上に政府部門を導入し、s(t):納税額、B(t):購入した国債として、予算制約式:(1+i(t-1))B(t-1)+M(t-1)+p(t)y(t)>=p(t)c(t)+p(t)s(t)+B(t)+Md(t)、M(t)=Md(t)+p(t)(y(t)-c(t))。
  • 財市場の均衡条件:c(t)=y(t)から、(1+i(t-1))B(t-1)+M(t-1)=p(t)s(t)+B(t)+M(t)。政府は、消費及び投資を行わない。第1期以降は定常状態でc*=y*、p*=M*/y*、i*=D^(-1)-1。
  • 効用関数の最大化条件(1st Order Condition):pdU/pdc(0)・1/p(0)=pdU/pdc*・(1+i(0))/p*⇔p*/p(0)・1/(1+i(0))=D・(c(0)/c*)^rho。
  • (A1)日本経済の供給能力は将来的に縮小:(y*/yf(t))^rho
  • (A2)粘着価格でp(0)は外生的に固定。政策対応がない状態では、物価上昇率は十分に大きくない:p*/p(0)

2 Fiscal Theory of Price Level

  • 財政政策は{s(r)}(r=t,...)、金融政策は{i(r),M(r),B(r)}(r=t,...)の決定。物価水準の財政理論(FTPL)では、{p(r)}を所与として{s(r)}を決定するのがRicardian Regime。先に{s(r)}が決定され、事後的に予算制約式を満たすよう{p(r)}が決まるとするのがNon-Ricardian Regime。
  • 名目金利が正の場合の第0期、第1期の予算制約式:(1+i(-1))B(-1)+M(-1)=p(0)s(0)+B(0)+M(0)、(1+i(0))B(0)+M(0)=p*s*+B*+M*。(1+i(-1))B(-1)+M(-1)、p(0):外生変数であるから、p*s*+B*+M*を固定すると、i(0)の引下げ→B(0)またはM(0)の増加→s(0)の引下げが必要*1
  • 名目金利が0の場合、第2期以降の予算制約式:D^(-1)B*+M*=p*s*+B*+M*。よってp*=B*/(Ds*/(1-D))=M*/y*、p*=(B*+M*)/(Ds*/(1-D)+y*)。第0期、第1期の予算制約式からB*+M*=(1+i(-1))B(-1)+M(-1)-p(0)s(0)-p*s**2。よって、p*を高めるには、s*またはs(0)を引下げることが必要。

3 3-Period Model

4 結論

  • Krugman Modelでは、財政政策を伴わない金融政策による期待インフレ率の拡大は不可能。
  • ゼロ金利下でGDPギャップ(yf(0)-c(0))が発生する原因は(A1)による。Krugmanは「構造改革=yf(0)の拡大」だから現時点のGDPギャップを拡大すると主張するが、「構造改革=y*の拡大」と定義すれば、構造改革は現時点のGDPギャップにとっても有益。

*1:理解のこなれていない部分

*2:論文中(16)及び将来の均衡政府債務残高に関する記述の理解はpending