ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

若年層はバブルの後始末の犠牲者か?(JMM 04/11/05発行)

概要

真壁昭夫:エコノミスト 若年者の雇用問題は世界的な傾向であり、経済の低迷、教育から就業への移行等様々な要因。我が国では、グローバル化の進展により人件費削減による競争力の強化が重要な命題であり、その際、中高年の雇用カットより採用抑制を優先するケースが多い。また、新卒の若年層と、フリーターや家庭の主婦等が競合。一方、一つの企業に定年まで在職するという考え方は少なく、フリーター・ニートや摩擦的失業が増加。
山崎元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 企業は、解雇・退職勧奨よりも採用抑制がコストが少なく、モラルへの悪影響も小さいと判断。加えて、賃金の小さい若年層は離職に伴う機会費用も小さい。若年高失業は習熟度の低下や社会不安に繋がるが、かといって、高齢者に職を譲るべきというのは不適切。同じ能力であれば、その能力を長く使える若年層により高い賃金を支払うことが経済合理的であり、高齢者はそれだけ厳しい条件で競争に参加。ただし、企業は将来の能力に対する投資ということも重視すべきか。
三ツ谷誠:三菱証券IRコンサルティング室長 若年層は何者かになる可能性を失っておらず、(靖国に祀られる英霊のように)社会の犠牲にはなっていない。個人的には、自分を犠牲者だと思う人間に魅力を感じない。
菊池正俊:メリルリンチ日本証券ストラテジスト 最近の景気回復から恩恵を受けたのは中高年層であるが、主要企業の採用意欲も高まっている。就職することは一生の就職先を決めることは意味せず、企業を夢見る若者も増えている。入社後に配属される部署や上司によって人生が左右され、就職や企業をどのように活用するかは心がけとやる気次第。
津田栄:経済評論家 若年失業の要因は、企業・若年層・社会構造の3つの要因があり、バブルの後始末の過程で若年層に犠牲を強いた面はあるが、景気が回復し全体の失業が改善しても、若年失業が相対的に高い状況は変わらない。放置することは、経済的・社会的に許されない。
岡本慎一:生命保険会社勤務 日本の若年失業率は、国際的にみれば低いがこのところ急激に上昇。これは景気停滞と関係があり、国際的にも若年層ほど景気との関係が強い。これは、若年層の経験・技能が相対的に低いため。景気循環的か構造的かを別にしても、技能格差の拡大は経済的・社会的に損失であり、対策が必要(フランス:補助金による若年者雇用の促進、ベルギー:従業員の一定割合を若年者とすることを義務づけ)。
金井伸郎:外資系運用会社企画・営業部門勤務 若年就業問題は、景気低迷による就業機会の喪失と一部での就業意欲の極端な低下(ニートなど)。これには、親の世代の就業・年金といった形での既得権益の維持が関与し、ニートはある意味でその犠牲者。加えて、社会階層の拡大も顕在化。

コメント 設問の背景には、「世代効果」といわれるものをどう考えるかという点があると考えられるが、論者の意見は総じて若年層に厳しい。労働市場の流動化を過度に強調するところは、論者が金融部門に属していることから割り引いて考える必要がある一方、企業の公正な選択という観点を強調することは正しい。このため、企業に「将来の能力に対する投資」を求めるだけでは現実性がなく、制度に目を向けること(例えば、構造改革的な観点からの雇用保護規制の在り方や、リフレ政策と連動した若年雇用対策など)も必要か。こうした観点から、いつもながら、岡本氏のリフレ志向とバランスの良さが際だつ。
そしてまたしても「既得権益」であるが、ここでは就業・年金という面に着目。就業状態に入れるか・入れないかということは重要な意味を持ち、その可能性が世代によって異なるとするのが「世代効果」の要であるが、年金の場合と同様、「公正・不公正」的な議論とは異なる。*1また、一旦就業状態に入った場合、自身の高い給与が市場価格であるという確信を得ている外資投資銀行の方からみれば、キャッシュフローの裏付けを持ち一定の公正なルールで配分される「長期雇用システム」上の賃金制度であっても、どこかに不公正があるはずという思いこみがあるのではないか。外部労働市場における取引価格と企業内部でのキャッシュフローの配分としての賃金のどちらが公正価値かという点については、決定不能であり労務屋氏の指摘するとおり「何の意味もない」。*2 *3

*1:三ツ谷誠氏の「犠牲」をめぐる議論と同様。ただし、その点だけを考えれば運が良かったという面はあるか。

*2:市場の整備が進み、完全情報に近い金融部門とその他の部門では状況が異なるという面もある。

*3:いずれにしても、景気が回復すれば特に注目されない事柄。