備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

竹内文英「労働分配率低下の背景」(JCER研究員レポート)

  • 要素分配率の変化を明示的に扱うことができるCES型生産関数を仮定して、分配率変化の背景を理論的に整理。Y(t)=[a{AL・L(t)}^{(sgm-1)/sgm}+(1-a){AK・K(t)}^{(sgm-1)/sgm}]^{sgm/(sgm-1)} L:雇用者数 K:資本ストック AL:TFP sgm:資本と労働の代替の弾力性(sgm≠1) a:sgm->1の場合に規模に関する収穫一定を確保するために必要なパラメータ(0*1
  • 企業の利潤最大化条件:pdY/pdL=W/P⇔a・{Y(t)/L(t)}^(1/sgm)・AL^{(1-sgm)/sgm}=W(t)/P(t)。これを対数式とし、右左辺入れ替えるとlog{W(t)/P(t)}=1/sgm・log{Y(t)/L(t)}+[Log(a)-{(1-sgm)/sgm}・logAL]=the・log{Y(t)/L(t)}+lamb との長期均衡関係式*2が導かれる。
  • 90年代はじめに、①長期均衡関係が崩れたのか、②sgmが1を下回るため労働生産性の上昇に伴い労働分配率が上昇トレンドを続けたのか。Perronの単位根検定では①は検出されないが、Gregory=Hansenの共和分検定から92年第3四半期に構造変化が認められる。*3この時期、sgmは大きく上昇。
  • 90年代に入りTFPが大きく鈍化+sgmが上昇→lambが上昇、により労働分配率のレベルシフトが生じる。その背景には、①労働の資本に対する相対価格の変化、②労働市場の流動性の低下(Lilien指標の低下により計測)。ただし、足下ではLilien指標は上昇の兆し。

*1:CES型生産間数は生産性分析のような議論に使用されるので、も少し勉強しておく必要あり。

*2:長期均衡関係式は、完全競争+伸縮価格を前提としていることが、以下の議論の障害とならないか?

*3:この点も勉強が必要。