ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

篠潤之介、中原伸「雇用形態の多様化とその影響〜パート・派遣・請負の増大をどう考えるか〜」(日銀レビュー)

  • 非正規雇用拡大の背景は、①女性労働力を中心に、勤務時間や日数に柔軟性を求める人々を企業が有効に活用しうる雇用形態として発達させたこと(ライフスタイルの多様化)、②人件費の変動化への動き*1、③99年の人材派遣をめぐる規制緩和の動き*2
  • 非正規雇用拡大の影響としては、①雇用期間の短期化、②一人あたり賃金の抑制効果*3。今後は、雇用者数の上昇傾向を通じて、企業と家計のバランスの取れた景気回復へ向かう。
  • 雇用・賃金の調整について、企業の内部で時間をかけて行うのでなく、労働市場に委ねるウェイトを高めていくことは、人的資源の効率的な配分を実現し、経済成長の維持に役立つ。人材育成・再教育を含めた広い意味での労働市場に、高いマッチング機能が備わっていくよう、さらなる環境整備が重要。

コメント 最後の結論はやや短絡的。ミクロ的に考えれば、雇用調整の役割の比重を内部労働市場から外部労働市場へ移していくことが、必ずしも企業の競争力を高めるとは限らない。非正規労働の価値を高めるには、当該労働の評価が適正になされることが必須であり、その上で、非正規労働市場が正社員の労働市場と分断されている現状には大きな障害。その意味で、これまでの調整ツールだけで十分なのかを含め、「環境整備」のあり方について考えを進める必要があるのでは。

*1:加えて、01年以降、労働分配率が低下する中でも雇用判断DIの改善テンポは緩やか。

*2:加えて、04年には、製造業への拡大、派遣期間の延長等の制度改正が行われた。

*3:特別給与については、パート比率上昇要因に加え、派遣社員比率上昇要因も大きい。