ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

関連して、野村正實「労働市場」(大原社会問題研究所雑誌)

  • 小池理論の中核は「知的熟練」論。生産ラインで働く直接生産労働者の一見単調に見える労働には「普段の作業」と「普段と違った作業」があり、後者には機械の知識や生産の仕組みの知識が必要(「知的熟練」)。これは、企業特殊的熟練であり、長期勤続の下で幅広いOJTにより身に付く。日本では熟練労働者による熟練の独占が生じなかったため、内部労働市場が伸び伸びと開花。
  • 小池理論は、氏原正治郎の熟練論を継承。ここでは、戦前日本における親方労働者(手工的万能的熟練の保持者でかつ労務管理者)が熟練の原型で、技術革新により「トレイドからジョッブへ」という過程を経るが、「トレイド」が解体した後、どの様な「ジョッブ」がでてくるのか明確にされない。
  • (筆者の批判によれば、)生産労働者は、直接生産労働者と準直接生産労働者の双方を含み、保全工や高度の検査工等の専門工は準直接生産労働者。小池理論では「生産労働者」から専門工の存在を排除し、その上で「生産労働者」が専門工の技能水準をマスターするどころか、部分的には「技術者」の知識水準にまで達しているかのように叙述。直接生産労働者は、専門工の知識を部分的に吸収するのが精一杯であり、「技術者」の水準まで達するはずがない。
  • これまでの労働研究には、日本資本主義の労働市場を総体として分析しようとする問題意識が欠如。労働市場の総体的分析は、内部・外部労働市場を包括し、男性・女性を含むことは言うまでもなく、労働の需要サイドと供給サイドの両方を見なければならない。この試みとして、(筆者は、)家族のあり方と労働力供給を結びつけて「全部雇用」論を生かそうとした。