ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

田中秀臣「"失われた15年の読書日記" ロナルド・ドーア『日本型資本主義と市場主義の衝突』」

(中略−「日本型」のシステムに関連して)もちろんこのシステムに問題がないわけではない。構造的な問題ならおそらくいくらでも列挙することができるだろう。しかし、どの構造的問題も「日本型資本主義」にとっては致命的とはいえない、と私は理解している。
(中略−Beason&Weinstein、ポーター&竹内等の実証研究に関連して)むしろこれらの実証研究では、ドーアの指摘するような生産性への寄与や研究開発効果などはほとんど検出されず、反対に産業政策の名の下で行われて「効果あった」のは、衰退産業の保護などの生産性に悪影響をもたらす政策ばかりであったということである。
(中略)本書では、また長期的なコミットメントがもたらす「信頼」や「公正」の観点が強調されていて、株主や経営者たちの短期的な利潤獲得行動に警鐘を鳴らしている。この点はたとえば最近のJR西日本の事故や、ライブドアの結局は短期的利益のみあげただけの敵対的買収事件などの事例をみれば、この「信頼」「公正」の重要性と、他方で短期的な貪欲の問題がさらに明らかになるだろう。

コメント 前エントリーに引き続きドーア物。田中先生の相変わらずの精力的な(「リフレ派」的考え方の普及に向けての「政治的な」と言っても良い程の)仕事ぶり。この点、目には見えないながら、大きな成功を収めていると思料。
産業政策への否定的見解については、岩田規久男氏の著書における見解と共通。また、本文の最初で論じられる、「日本型」と形容される経済システムに関する言及については、青木昌彦、奥野正寛「経済システムの比較制度分析」*1も合わせ読みしたいところ。

*1:

経済システムの比較制度分析

経済システムの比較制度分析