備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

岩田一政副総裁講演「25年後の「金融政策と銀行行動」」

  • 銀行準備の利子弾力性が無限大になる「流動性の罠」に陥っている場合には、資金供給増の効果はゼロであるが、短期の市場利子率がゼロであっても、より長めの金利が正であり、資金需給に反応して銀行がより望ましいとする超過準備が変化する限り効果がある。量的緩和政策の実施にもかかわらず銀行貸し出しが減少しているのは、企業部門が超過債務を返済し続けていること等による。
  • 裁量的な政策は初期条件の変化がある度に将来の政策を組み直す政策であり、動学的な整合性に欠け、最終的には中央銀行への信任が欠如。これに対し「物価水準目標政策」は、動学的な整合性を維持しようとするもの。
  • 民間部門にとっての外部資産である政府債務とマネタリーベースの和が名目値で増加し続ければ「異時点間のピグー効果*1が発生するはず。賃金の伸びが名目でも実質でも減少した停滞期において、個人消費は底固い動きを示しており*2、60歳以上の高齢者の消費性向も近年高まりを見せている。コア消費者物価の変化率が「安定的にプラスになるまで」量的緩和政策を続けるというコミットメントの明示と、本源的な赤字をゆっくりと減少させる財政政策の組み合わせによって、デフレ均衡から出ることは可能。
  • デフレ幅の縮小には、GDPギャップの水準ではなく、GDPギャップの縮小が対応。この変化に注目する見方は「速度制限論」と呼ばれている。テイラー・ルールの決定要因についても、GDPギャップに加えて、その変化を入れた方が金融政策の成果を高めるという主張もある。

コメント 理解するためには、岩田一政・浜田宏一著「金融政策と銀行行動」を読む必要があるか。(ただし、現在発売していない模様。)

*1:基本の備忘録:金融政策の効果は、マネタリーベースを増加することにより、利子率低下による投資の刺激効果(ケインズトービン効果)と、実質貨幣供給増による資産効果ピグー効果)という二つの側面を持つ。

*2:02/19付けエントリーの岡本慎一氏のコメント参照。