ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

内藤伸治「J-REITの成長とその意義」(ARES)

1 J-REITの仕組みと意義

  • J-REIT*1SPVである「投資法人」は、「投資主総会」「執行役員」「監督役員」等により構成。投資法人は使用人を雇用できないため、法人の事務は「一般事務委託者」に委託。また、執行役員自身は投資判断ができず、投信法上、投資信託委託業者の免許を持つ運用会社に委託する必要。その他に「資産保管会社」が登記済証の保管等を行う。J-REITの成果は、ひとえに運用会社の能力に係る。
  • 投資法人は、税制上、所定の基準を満たす投資法人は支払配当額の損金算入が可能という導管性のメリットを享受。ただし、この場合、当該法人は資産運用以外の営業ができない。また、期間利益の90%以上配当する義務を持ち、10%未満の範囲で認められる留保利益には法人税がかかる。

2 地球的規模で拡大するREIT制度

  • J-REIT市場の規模(時価総額)は約2兆円で、米国(同約30兆円)、オーストラリア(同約6.5兆円)と比較して小さい。また、セクター別には、賃貸住宅、商業施設のウェイトが小さく、オフィス(約70%)に偏る。

3 内部運用と外部運用

  • 内部運用型とはSPVの取締役や従業員が直接資産運用を行うもので、米国、フランス、オランダ、カナダ等では認められている。外部運用型では、運用報酬をめぐり運用会社との利益相反が構造化される一方、運用会社である不動産会社の情報・ノウハウを利用することが可能。
  • オーストラリアのREIT(LPT:Listed Property Trust)では、「ステイプルド・セキュリティ」という制度により、SPVと運用会社の上場証券を併合した証券のみを流通させるといった仕組みが利用されている。

4 REITの成長戦略〜内部成長と外部成長

  • 内部成長とは、運用資産規模はそのままでREIT内部の経営努力による業績向上。これに対し、外部成長は、不動産の追加取得や他のREITの買収・合併によるもの。外部成長は増資を伴うが、①発行量が増加することによる流動性リスクの減少、②ポートフォリオ効果によるキャッシュフロー・リスクの減少、③デッド資金調達力の向上という面で安定性が向上。
  • 加えて、収益力の面では、①シェア拡大による交渉力・情報力の強化、②コーポレート・ブランド価値の向上、③開発投資余力の増大、④規模の利益というメリット。米国では、大型REITの評価が相対的に高く、セクター別に見て上位3社がセクター合計の概ね5割以上を占める。

5 J-REIT市場のさらなる発展のために

  • 米国REIT市場が拡大したのは、オーナー経営型パートナーシップが、含み益を温存したまま契約形態から法人形態へ転換することを可能とするUPREITと呼ばれる仕組みを使って矢継ぎ早に上場したこと等による。日本では、投資グレード不動産の保有主体や保有目的が異なり、同様の拡大は望めない。
  • 日本では、投資グレード不動産が株式会社等により保有されており、これらが円滑に投資市場に適用されるには、①企業資本の効率利用の観点から、不動産について保有よりも利用を重視する意識改革、②株式会社等と投資法人等との間の合併、分割、株式交換を自由にして、企業再編と証券化の連携を強化することが効果的。

*1:前回取り上げた「資産流動化型証券化」に対して、J-REITは「資産運用型証券化」に分類される。