ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

佐々木康一、一瀬善考、清水季子「J-REIT市場の拡大と価格形成」(日銀レビュー)

  • J-REITでは、不動産の価格は、その不動産が生み出す収益を基に求められ、同様にJ-REITの価値も決定。J-REITの収益が増加する過程は、内部成長、外部成長、財務運営という3つの観点から整理可能。
  • 内部成長は、保有不動産の稼働率の上昇や賃料上昇、経費削減等による収益の増加。稼働率は、新築物件の供給増加による市況悪化が懸念されたほどではなかったため、03年半ば以降上昇。一方、賃料は、足下で下げ止まりつつあるものの明確な反転には至らず。J-REIT保有物件についても、テナントの入れ替えに伴う賃料の減額改定等を受けて減少しており、内部成長の寄与はこれまでのところ限定的と考えられる。
  • 外部成長は、新規物件の取得による資産規模の拡大等を通じた収益の増加。不動産取引における買い手を見ると、02年以降投資目的法人の構成比率が上昇。
  • 財務運営においては、J-REITでは内部留保が限定されるため、新規物件を取得する際は借入・事業法人債、増資が必要。これまでのところ円滑な資金調達を実現。負債比率は、40〜50%の水準を維持しており、設定された上限(概ね50〜70%)を下回る。
  • J-REITに対する市場の評価は、①第Ⅰ期(〜02年秋)は、PBRが1倍未満に止まる、②第Ⅱ期(〜03年末)は、PBRが1倍を継続的に上回り、J-REIT価格を不動産が生み出すキャッシュフローとの対比で見たFFO倍率*1は緩やかな上昇、③第3期(04年〜)はFFO倍率が一段と上昇し、投資家層の厚みが増す。
  • 今後の価格を見る上では、新たなJ-REIT上場による需給悪化懸念や株式選好の強まり、金利上昇局面における収益面、需給面の影響に留意する必要。
  • 不動産投資においても、他の金融商品と同様、各種のバリュエーション指標を用いた評価が行われるようになれば、ファンダメンタルズが一層反映されやすくなる。不動産取引がJ-REITを通じて資本市場との結びつきを強めれば、不動産価格の行き過ぎた変動に対する抑制作用が働く。

*1:J-REIT価格/投資口あたりFFO(Funds From Operations:不動産売却損益を除いたREITの純利益に減価償却費を加算した金額)