ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

吉田哲生「競争力を創る人材資源の中長期シフト」(三菱総合研究所)

  • 日本産業を取り巻く国際的自由化・規制緩和の基調を考えると、国際競争力を配慮した産業バランスの観点から、日本産業間の適正ポートフォリオとして製造業への人材資源配分を国策として重要視すべき。技術資源の潤沢な保有・維持の仕組みは十分ではないが、これからの競争力を担う人材・技術を育成する施策と携えて再興を図る必要。
  • 少子高齢化で潜在労働力の減少は抗し得ず、将来労働力を量的質的に補完するために積極的に人材を活用する方向での議論が少ないのは気になる。団塊世代の技術力喪失が懸念されているが、喪失がマイナスならば雇用制度を柔軟にして長く維持する仕組みを検討すべき。

コメント オーソドックスな雇用流動化論。この種の議論に感じる違和感は、極めて「サプライサイド」(企業側)的な見方にある。人材の供給が企業の労働需要を満たせず、ボトルネックとなるのは問題であるが、それはあくまで「デマンドサイド」とのバランスで決まってくるもの。例えば「製造業への人材資源配分を国策」とした結果、製造業の労働生産性が低下すると考えるのは自然な見方。また、「団塊世代の技術力喪失」はミクロの問題であり、マクロ的な中長期的人材シフトの話に繋げる必要はない。「雇用制度を柔軟」にすることに伴う問題ついては、05/11付けエントリーでの指摘を参照。