備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

川俣雅弘「20世紀の経済学における序数主義の終焉」に関連して、基本概念に係る備忘録

  • 序数的効用とは、その数量的表現が大小関係のみ意味を持つ効用。効用水準の値や差に関する経済学的意味はない。反対概念として、基数的効用。
  • ゲーテルの完全性定理:述語論理の公理系は無矛盾であるならば論理的妥当であり、論理的に妥当なものは全て証明できる。ゲーテルの不完全性定理自然数を含む述語論理の体系が無矛盾であるならばそれは決定(証明)不能。
  • 理経済学及び理論経済学の公理化に基づき様々な学派の理論が解釈され、定式化された。ワルラスの経済学(一般均衡理論)とマーシャルの経済学(費用便益分析)は、それぞれ相反する、個別には無矛盾な理論。
  • 経済的厚生の3命題(ピグー):「1人あたりの国民所得が大きいこと」「国民所得の貧者への帰属する割合が大きいこと」*1国民所得の変動と貧者への帰属する割合の変動が小さいこと」。
  • 異なった個人の異なった満足を総計したり比較したりするのは、事実の判断ではなく価値の判断を含んでいる。かような判断は実証科学の範囲を超えるものである、というロビンズの批判。
  • アローの一般不可能性定理:効用の基数性・個人間比較可能性を排除すると、①論理的に可能な個人の選好順序に対する社会的に合理的な選好順序を構成することが可能とする広範性、②全員一致のルールを意味するパレート原理、③2つの選択肢の社会的順序の決定は、当該2つの選択肢の全ての個人の選好順序がわかれば可能とする独立性、④独裁者の存在を許さない非独裁性、の4つの公理のを満たすという意味において、合理的、情報節約的、民主主義的に個人の選好順序を集計して社会的選好順序を形成するルールは存在しない。
  • 社会的厚生を個人の効用の和と考える功利主義社会的厚生関数、社会的厚生を個人の効用の積と考えるナッシュ社会的厚生関数、社会的厚生を個人の効用の最小値と考えるロールズ社会的厚生関数は、W(u1,...,un)={Σui^rho}^(1/rho)において、それぞれ、rho->1、rho->0、rho->∞に対応。

コメント韓リフ先生のblog経由。当該論文に係る韓リフ先生の感想はこちら。でも、素人(@勉強中)にとっては、見通し・方向性を明示してくれるという意味で、このような論文は有効でつ。

*1:基数的効用に基づき、個人の貨幣の限界効用が逓減することにより生じる命題。