ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

小林慶一郎「誰のための財政再建か」(MM日本国の研究 08/04/05発行)

  • 財政赤字の対GDP比は約8%程度で推移しており、このままでは債務比率は無限大になるため、財政運営は長期持続的なものではない。ただし、政府は約430兆円の金融資産を持っており、これを差し引いた純債務はGDPの約70%程度。欧米と比較しても、必ずしも悪いものではない。
  • 日本経済は、これから先いくら景気が良くても2%以上の経済成長率は期待できない。日本経済は、過去2年、フルスピードで成長していたにもかかわらず、税収は、財政悪化のスピードに対して焼け石に水。
  • 日本の財政が経済にもたらす弊害は、①「取り付けが起こるかも知れない」という不安心理が国債金利を不安定にする「流動性の問題」、②投資家の財政に対する「信頼性の問題」、③政府が国債償還のために増税することで、集められた資金が富裕層の国債保有者に支払われるという「所得再分配の問題」。
  • ラテンアメリカでは、政府債務をインフレで帳消しにしようとした結果、インフレが止まらなくなり、金利が上昇して政府の債務も膨れあがった。
  • 財政の出口は、インフレ、増税、歳出削減のいずれかしかない。その選択を行う際の一つの基準は、経済思想上の価値判断。上記の弊害が示すのは、公的債務の膨張が、政府の恣意的な政策変更をもたらし、市場経済に(予想外の)悪影響を与えるリスクが高まること。市場経済の安定性を守るという立場から評価すると、歳出カット*1の選択肢が正当性がありフィージビリティも高い。

コメント インフレをコントロールすることで経済・財政上の問題に寄与することは、外国の経験からみて誤っており、経済成長が到来して財政危機を回避できるという考え方はほとんど不可能、という著者の信念ともいうべき意見が開陳される。無論、現代のマクロ経済理論は、必ずしも上記の信念を根拠づけるものではないことは、多々主張され続けているわけで、多くの異論のあるところ。

*1:タイミングの問題は残る。