ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

小田信之、永幡崇「金融政策ルールと中央銀行の政策運営」(日銀レビュー)

  • 金融政策ルール(monetary policy rule)とは、物価や経済活動の安定を目的に、マクロ経済の変動に応じてシステマティックに金融政策を運営する方式を表現したもの。経済に発生する需要ショックや供給ショックの影響を相殺するように金融政策を運営すれば、経済は望ましい状態の付近で安定的に推移。将来の期待の役割を重視する経済理論(ニュー・ケインジアン等)では、足下から先行きの景気や物価の経路は、将来の金融政策から期待されるフィードバック効果をも織り込んで決定される。
  • テイラールールの基本形:政策金利=均衡実質金利+目標インフレ率+a・(インフレ率−目標インフレ率)+b・需給ギャップ*1均衡実質金利は、伸縮価格で実現する実質金利で、概ね2%。a、b:政策反応パラメータは、オリジナルのテイラールールでは、経験値からそれぞれ1.5、0.5。aは、a>1:「テイラー原則」を満たさない場合、インフレ率の上昇があっても、実質政策金利がマイナスとなる。
  • テイラールールのバリエーションとして、前期の政策金利の効果(「金利スムージング」の効果)を取り入れたり(パラメータにr・前期の政策金利 (0
  • シンプルな金融政策ルールには、テイラールールの他に、名目成長率ルール:政策金利=均衡実質金利+目標インフレ率+thi・(名目成長率−目標名目成長率) があり、また、金利をターゲットとするもの以外には、マッカラムルール:マネタリーベース増加率=目標名目成長率−流通速度変化率−r・(名目成長率−目標名目成長率)がある。*2ただし、90年代末以降の日本では、金利とマネタリーベースの間の関係が崩れてしまうため、マネタリーベースの増加・減少を通じて経済を安定化し得るとの想定自体が適切でなくなる。
  • シンプルな金利政策ルールの他に、マクロ経済に実現し得るあらゆる経済状態を記述する枠組みを想定し、各経済状態に応じてどのような金融政策が実行されるのが最適であるかを緻密に表現しようとする状態依存ルールがある。
  • 時間不整合が生じるのは、例えば、インフレ率と失業率のトレードオフが存在する場合、中央銀行が「インフレの引き下げをより優先して金融を引き締める」と宣言しても、民間部門は金融緩和の可能性を察知してその宣言を信用せず、期待インフレ率が下がらずトレードオフも改善しないようなケース。実際の金融政策ルールは、システマティックな政策運営を基本としつつも、予期せぬ事態にも適切に対応可能な機動性を確保しておくことが重要。

*1:あるいは、実質ベースの政策金利=均衡実質金利+(a-1)・(インフレ率−目標インフレ率)+b・需給ギャップ

*2:lnMd+lnV=ln(PQ)。名目成長率が目標値に満たない場合、通貨需要の増加率以上の増加率でマネタリーベースを提供。