山田久「人口減少時代の雇用システム改革〜2015年までに500万人の"人材"不足の恐れ〜」(日本総研)
- 人口減少は、市場原理(資本の論理)を徹底させ、競争の激化・高収益性の追求を加速。このため、「労働需要の高度化・柔軟化・流動化」を促進し、専門職・技能工の人材不足を一層深刻化。我が国の産業構造の向かう方向性は「第2次産業と第3次産業の融合を通じた2.5次産業化」とも言うべきもの。
- 過去のペースでしか専門職の供給が増えないとすれば、平均1%半ばの成長を達成するために必要な人材が、(ミスマッチの要素を含めて、)2015年までに486万人不足する。*1プロフェッショナル・スキルのある人材をどう育てるか(例えば、ジェネラリスト型「事務職」をプロフェッショナル型「専門職」にどう転換するか、旧来型「販売職」をいかにして問題解決・提案型営業プロフェッショナル人材に育てるか等)が課題。
- 人口減少時代の到来が要請する「労働力の多様化」「労働需要の高度化・柔軟化・流動化」に対応した人材が十分に供給されるには、「人基準の正社員重視システム」から「仕事基準の多元的雇用システム」への転換が不可欠であり、加えて、企業外に社会的人材育成インフラが整備されることが必要。
コメント 均衡失業率が4%とする推計には異論もあるか。人口減少による1人あたり金融資産の高まりが株主主権を高めるという見方は初耳。不足人員数の推計については、D.I.のベースとなっている労働経済動向調査の規模や産業が限られてい点などの疑義が指摘され、総じてどの程度の妥当性があるのかは不明。なお、この推計とは直接繋がらないが、情報化の進展が高度熟練労働者の需要を高めるかどうかについては諸説あることが「日本の不平等」(10/14付けエントリー参照)でも触れられている。*2今後の雇用システムを展望することは困難な作業と考えるが、90年代後半以降のデフレ経済が企業へのコスト抑制圧力を高めたことにより雇用の非正規化が進んだ現在、単にこれまでの雇用システムが復元されるとみるのは早計とする点は妥当か。その上で、仕事基準・多元的なものへの変化を提言しているが、この点については極めてオーソドックスかつステロタイプ。*3