ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

尾原重男「平等か悪平等か」(三菱総研)

  • I・カワチ、B・P・ケネディ「不平等が健康を損なう」は世界の各国間、アメリカ社会の時代的な比較によって所得格差が及ぼす影響を分析。これによると、一国の所得水準が低いうちは所得水準の上昇につれて国民の満足度が上昇するが、一定レベル以上になると所得が上昇しても満足度が上がらない。これは所得の絶対水準が上昇しても他人に比べて自分が低ければ人々の不満が募るから。
  • 同書の分析結果に基づいて所得の不平等がない社会を目指すとどうなるか。理屈の上では皆が同じ所得で不満もなくハッピーになるはずだが、現実は皆の所得水準が大幅にダウンして社会が貧しくなってしまう懸念がある。他人より高い所得を得たい、他人より劣った生活水準を改善したい、という人々の意識と努力が経済を活性化させ社会を発展させている点は重要。
  • 不平等を是認すると勝者の論理であると批判が起こるが、動物の世界でも人の世界でも競うことによって種を保存し社会を発展させてきたことも事実。税制でも社会保障制度でも、機会の平等を重視して能力と意欲のある人達に存分に活躍してもらい、その成果(の一定部分)を活用して社会的な弱者を守る仕組みを組み込むことにより経済的豊かさと人々の満足の折り合いをつけていくことが必要。