ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

「インタラクティヴ読書ノート別館の別館」11/11付けエントリーのコメント欄における議論

日本の状況も、既存労働者の権利を守れと旗をふり、パートやフリーターを蔑視する左翼的なスタンス(中略)は、たぶん若年労働の就職難を後押ししてるんじゃないかと思えます。
左翼がフリーターを組織化したら、かれらの労働力としての存在意義がなくなってかれらも使われなくなるでしょう。不景気で労働需要の絶対数が減っているために、従来の正規雇用を減らそうという動きが起きていて(中略)、左翼的な運動は雇用の流動性を減らす方向に努力することでそうした雇用形態に対する需要すらなくす方向に動いているという話です。

不景気下の対応として、結局弱いもの・能力の低いものから痛い目にあうのは勘弁してくださいよ、しかも富めるものはけっこう富めるままじゃん、という感情があり、そこから陰謀史観が生まれるのは当然だと思います。リフレ派が左翼に指示を得られない・関心を持たれない理由としては、左翼が問題視するのが、「景気悪化による労働者の生活悪化そのもの」ではなくて、「痛い目にあうのはいつも弱いもの・能力のないものが先」というあたりだからな気がします。

コメント 「既存労働者の権利を守」る安定的な雇用システムは、デフレ下の採用抑制のもとで、若年の就職難を後押しするという(玄田氏的な)議論はあり得る*1が、そのことが労働者のコミットメントを低下させることを通じ長期的な成長力を抑制することで、さらなるデフレ的情勢を生み出すという(フランク的な)議論もあり得るか。また、不景気の下での「目の前の不確実性への対応」は必要だとしても、長期的な生産性を考えた場合、柔軟な企業モデルとしてはアドホックな非正規の活用ではなく戦略的な対応が必要という(アトキンソン的な)議論もある*2。とはいえ、(雇用ではない)賃金や労働時間の「柔軟化」を進めることで「既存労働者」の覚醒を促すという議論*3は、一定の正当性を持ちうるものだと思うし、既にかなりの程度そのような方向性に進んでいるようにも思える。(引用した)後半の議論は、功利主義的な厚生基準を前提としがちな(経済学的)思考への反論か。*4これらの点については、今読んでいる「幸福の政治経済学」(或いは、「大竹文雄のブログ」にリンクされている論文)とも関係してくるかも。

*1:「既存労働者」に対する雇用保護規制が非正規労働者のそれに対して相対的に低いことが、社会の非正規化を進めるという議論もある。例えば、OECD Employment Outlook 2004 pp.86-89。

*2:10/25付けエントリー参照。

*3:11/11付けエントリー参照。

*4:「リフレ派」とはあまり関係がないような。