ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

斎藤太郎「非正規雇用の拡大が意味するもの」(ニッセイ基礎研REPORT 06年5月)

  • 厚生労働省「毎月勤労統計」によれば、98年半ば頃から続いていた常用労働者数は、04年に入って増加し始め、05年からは、(パートタイム労働者以外の)一般労働者についても増加し始めた。ただし、毎月勤労統計の一般労働者は必ずしも正社員とは限らない。総務省労働力調査」によれば、正社員は減少が続いており、雇用者数の増加に寄与しているのは、パート、派遣、契約社員、嘱託などの非正規雇用
  • 総人件費を「(1人あたり)現金給与総額×雇用者数」とすると、97年から04年までに総人件費の削減は10%に及び、このうち雇用者数の削減によるものが1.7%、賃金の減少によるものが8.3%。さらに、1人あたり賃金の減少の内訳をみると、賃金低下によるものが1.3%であり、圧倒的に大きな寄与をしているのが、非正規雇用比率の上昇で7.0%。
  • 非正社員は、失業化率、非労働力化率が高く、正社員に比べ安定性に欠ける。足下の労働需給逼迫に、07年以降に団塊世代の大量退職を控えていることが加わり、労働需給の改善傾向がさらに強まれば、非正規雇用への流れに歯止めがかかる可能性もある。

コメント 非正規化の流れは明らかに企業の財務体質を改善したが、非正規雇用離職率の高さ*1は、特に企業特殊的な職業能力を身につける機会を結果的に縮小させるため、団塊世代の大量離職と合わせて考えれば、企業の将来的な生産性向上にマイナスの影響を与えかねない。労働需給の逼迫によって、企業内でこれまでウェイトを高めてきた、財務指標を基準として、(短期的に)時価総額を向上させることを至上命題とする考え方が改まり、人的資本の向上を目的とする人事部的な考え方が強まれば、筆者のいうように、非正規雇用への流れへの歯止めとなる可能性はある。

*1:無論、離職率の高さは、非正規雇用のマジョリティ的な働き方(ニーズ)と、企業側の社会通念を反映したもの。非正規雇用に係る社会通念を超えて、非正規雇用にも様々な働き方、働く人の様々なニーズがある、といった新たなコンセンサスが生まれれば、この点を殊更問題にする必要が無くなる時代が来るかも知れない(たぶん)。