ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

原尚子、長野哲平、上原博人、木村武、清水季子「経済見通しの作成における政策金利の前提」(日銀レビュー)

  • 金融政策の効果が実体経済や物価に影響が及ぶまでにはラグが存在するため、政策運営はフォワード・ルッキングであることが必要。このため、金融政策運営においては、経済見通しを作成することが不可欠であり、その際、自らの操作変数である政策金利について、何らかの前提をおくことが一般的。
  • 政策金利の前提は、金利不変と金利可変の2つのタイプがあり、後者には、市場予想に基づく方法や政策ルールで決める方法がある。日本銀行は、2005年10月までの展望レポートでは、金利不変を前提としていたが、4月末に公表した展望レポートでは、市場金利に基づく可変金利を前提として、経済見通しを作成している。
  • 政策金利不変の前提は、経済や物価を安定化させるために必要な金利経路とは異なる可能性がある。また、長期金利や株価などは、先行きの経済・金利情勢、その下での金融政策運営に対する予想に基づき形成されており、足許における資産価格変動の影響を経済見通しに織り込む一方で、政策金利の前提を不変にすれば、経済見通し内の整合性が確保されない。
  • 市場予想に基づく可変金利の前提は、市場での予想は合理的であり、金融市場の金利形成は効率的であることを仮定。しかし、市場の予測が織り込まれたフォワード・レートのパフォーマンスは必ずしも高くはない。経済のファンダメンタルズから乖離しうる市場の予想金利を経済見通しの前提にして金融政策判断をするようになると、市場がそのことを織り込んで金利の予想をするようになり、市場の金利予想はファンダメンタルズからますます乖離する(円環性の問題)。
  • 中央銀行自身が想定する政策金利の経路を前提とした場合、経済や物価の安定を目的とした中央銀行の将来の行動を内生的に経済見通しの中に織り込むこととなる。この場合、政策金利の経路についてコミットメントしたと市場から受け止められる可能性が高く、柔軟な政策運営を行う上で障害に成り得る。
  • ターム物レートとO/Nコールレートの差は、例えば3カ月物レートの場合、先行き3カ月間のO/Nコールレートの変化幅の見通しと、リスクプレミアムからなる。3〜6カ月先のO/Nコールレートに対する市場の見方を推測するには、①3カ月先スタートの3カ月物レート(フォワード・レート)を計算、②何らかの方法で推測したリスクプレミアムを差し引く、という手順を採る。

コメント 政策金利の経路についてのコミットメントをデメリットとして捉えているが、時間整合性の観点からメリットとしても捉え得ることを指摘すべきではないか。