ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

藤木裕「開放経済下での金融政策入門」(日銀レビュー)

  • 為替相場の決定要因については、①国際的な財・サービスからの取引需要、②国際間の資産選択需要、③国際的な財取引に働く長期的な裁定、等が指摘される。③によれば、為替相場は、長期的には、両国の物価水準を調整するように決まる(購買力平価説)。

(マンデル・フレミング・モデル)

  • MFモデルは、(財市場の均衡と貨幣の需給均衡に基づく)IS-LM分析を開放経済に拡張したモデル。MFモデルの基本形では、①外国の金利が一定、②物価水準は硬直的、③国際間の資本移動は完全、④経済主体は現在の為替相場が将来も継続すると予想し予想変化率はゼロ、であることを仮定しており、③④より、自国の名目金利i=外国の名目金利i*、となる。
  • ④の仮定は、変動相場制の下では不自然。このため、⑤経済主体は為替相場の変化率を正確に予想する、⑥為替相場の長期的な決定要因は購買力平価説による、と仮定。③⑤により、i=i*+為替相場の予想変化率=i*+為替相場の実際の変化率、となる(金利平価説)。
  • これらの仮定の下で、金融緩和によるマネーサプライの永久的な拡大を考えると、a.物価水準の硬直性から、貨幣市場の均衡のため自国の名目金利が低下し、為替相場の予想変化率はマイナスになる。b.価格水準も変更可能となった場合、物価水準はマネーサプライの増加と同じ割合で上昇するので、⑥より、為替相場はこれと同率で現時点の為替相場よりも減価する。この為替相場の調整過程を表したのがドーンブッシュの「オーバーシューティング」現象。ここでは、金融緩和は一時的な効果を持つが、長期的にはその効果がなくなる。

(オブストフェルド・ロゴフ・モデル)

  • MFモデルは、ミクロ的基礎付けが無く、政策が経済主体の異時点間の選択に与える影響が不明確。ORモデルは、こうした批判に応える形で公表されたもので、①財市場における各企業は「独占的競争」状態にあり、自国企業は自国の消費者への販売価格をそのまま外国通貨換算した価格で海外の消費者に財を提供(PCP;Producer's currency pricing)、この場合、購買力平価の関係が常に成立、②当期の財の価格は1期前に決定され、短期には変更不可、③消費者が自由な国際資本市場からの借り入れ・貸し出しを行い得る、つまり、MFモデルの仮定③を動学的な環境の下で仮定、という3つの特徴がある。
  • 金融緩和による予測されないマネーサプライの永久的な拡大を考えると、a.短期的には、貨幣市場の均衡のため自国の金利が低下し、為替相場が減価する。自国・外国の消費者の自国財への消費が増加し、自国の生産が拡大。独占的競争企業は、価格が変わらなくとも需要があれば生産を拡張しようとする誘因が働く。自国の消費は生産ほどには増加しないため、経常収支は黒字化する。b.長期の均衡においては、自国の利子収入が増加し消費は当初の均衡よりも増加。生産は、労働の不効用が高まるため自国では減少し、外国では増加。この間、為替相場は短期のうちに長期の均衡水準にジャンプし、「オーバーシュート」は起こらない。
  • ORモデルの留意点として、①自国と外国の間の財・サービスの相対価格は名目為替相場と密接な関係があり、PCPの仮定は実証的に支持されず、市場ごとに企業が価格を決める価格設定(PTM;Pricing-to-Market)がとられていることが示唆されること。このように、為替相場による経済の資源再配分効果がない場合、固定為替相場制を導入した方が自国の資源配分の効率化において望ましいとする研究もある。また、②ORモデルでは、自国と外国のマネーサプライの差と、消費の変化率の差が丁度為替相場の長期的な変化幅と同じになるため、モデルの予測に従うと、為替相場の変化率がマネーサプライの変化率よりも小さくなる。この性質は、実際の為替相場が激しく変動することを考えると説得的ではない。

(クラリダ・ガリ・ガートラー2国モデル)

  • MFモデルとORモデルでは、①ORモデルでは、来期になれば価格を自由に変更できるため、GDPGAPが長期間ゼロから乖離する状況を記述することが難しく、②実際にはマネタリーベースではなく金利を操作することが金融政策運営の主流である、といった限界がある。これを改良したのが新しいケインズ経済学の2国モデル(CGG2国モデル)であり、(1)家計が差別化された技能を持ち、労働市場も独占的競争市場、(2)企業部門は、中間財企業と最終財企業に分けられ、中間財企業は数多くの独占企業からなり、最終財企業は市場価格を所与として自国と外国の家計に販売する、という点が大きく異なる。①については、カルボ型の価格調整が仮定され、②については、閉鎖経済モデルと同様に、IS曲線、NKPCを制約条件として、社会厚生を最大化するよう金利を調整する、と想定される。
  • CGG2国モデルの最適金融政策ルールは、数学的には、名目金利=a・自国の自然産出量期待値+b・外国の自然産出量期待値+c・自国の期待インフレ率(c>1)となる。閉鎖経済の政策ルールとは、①インフレ率への政策金利の反応度合いが高い、②自国の政策金利は、外国の自然産出量にも依存、③実質為替相場の影響は直接的には出てこないが、自国の均衡実質金利の変動を通じて伝わってくる、といった点が異なってくるが、閉鎖経済において説明された望ましい政策運営の理論的含意は開放経済においても通用する、という非常に強い結果が導かれる。

コメント 正直、あまりよく理解していない。も少し勉強する必要あり。