備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

デービッド・ローマー「上級マクロ経済学」(その1)

上級マクロ経済学

上級マクロ経済学

第1章 ソロー成長モデル
 1.2 諸前提

  • ソロー・モデルの生産関数は、Y(t)=F(K(t), A(t), L(t) )…(1.1) と表現され、関数Fはtに依存しない。A, Lが「AL(t)」として生産関数に組み込まれる場合、技術進歩は労働節約的(ハロッド中立)であると言う。*1
  • ソロー・モデルの最も重要な最も重要な前提は収穫一定:F(cK, cAL)=cF(K, AL)…(1.2) であり、これは、①「特化による利益」が存在しないくらい国の規模が大きい、②資本、労働、知識以外の投入(土地、天然資源等)は相対的で重要ではない、の2つの仮定を結合させたものと理解可能。この前提から、効率労働当たりの産出量:y=(1/AL)・F(K, AL)=F(K/AL, 1)=f(k)…(1.4), k=K/AL と標記できる。これは、効率労働あたりの産出量が効率労働あたりの資本のみに依存しており、経済の規模は無関係であることを意味する。
  • f(k)は、f(0)=0, f'(k)>0, f''(k)<0 と想定。ここで、pdF(K, AL)[/pdK](FのKによる偏微分)=AL・pdF(k,1)[/pdk]・(pdk[/pdK])=AL・f'(k)・(1/AL)=f'(k) となることから、f'(k)は資本の限界生産性。さらに、稲田条件:lim(k→0)f'(k)=∞, lim(k→∞)f'(k)=0 を仮定。これは、経済成長の経路が発散的にならないことを保障する役割を果たす。
  • モデルは連続的な時間上に定義され、資本、労働、知識の初期賦存量は所与、労働、知識は定率で増大:dL(t)[/dt]=nL(t)…(1.8), dA(t)[/dt]=gA(t)…(1.9)。ここで、L(t)=L(0)・e^nt とすると、dL(t)[/dt]=nL(0)・e^nt=nL(t) であり、(1.8), (1.9)は、労働及び知識は指数的に増大することを意味する(i.e. 労働と知識の変動は、外生的に与えられる。)。
  • Y(t)=C(t)+S(t)=C(t)+sY(t) と表した場合、(ソロー・モデルにおいて、)貯蓄率sは外生の変数。(i.e. Cの水準は、家計の意志決定に依存しない。)また、資本は定率rで減耗:K(t)[/dt]=sY(t)-rK(t)…(1.10)。*2また、n+g+r>0と仮定。
  • ソロー・モデルでは、世界に1財しかなく、政府が存在せず、雇用変動は無視され、生産はたった3つの投入から構成される集計された生産関数で記述される。しかし、モデルの目的は、現実的であることではなく、現実の世界のある特定の側面について洞察を与えること。

 1.3 モデルの動学的特性

  • 効率労働あたりの資本ストックの変化は、dk[/dt]=K'(t)/A(t)L(t)-K(t)[A(t)L'(t)+A'(t)L(t)]/[A(t)L(t)]^2=[sY(t)-rK(t)]/AL-n・K(t)/A(t)L(t)-g・K(t)/A(t)L(t)=sf(k)-(r+n+g)k…(1.13) と標記される。よって、効率労働あたりの資本ストックの変化は、効率労働あたりの投資量(=貯蓄量)から、平衡(break-even)投資(kの水準を維持するために最低必要な投資)を減じたものに一致する。
  • 稲田条件より、sf(k)は(r+n+g)kとk=0で交わり、①K>0, 0の近傍でsf(k)>(r+n+g)k となり、②ある1点k*>0でsf(k*)=(r+n+g)k*となり、③k>k*ではsf(k)<(r+n+g)k となる。①の状態においては、投資は平衡状態を上回り、dk[/dt]>0となるのでkは上昇。逆に、②の状態においては、dk[/dt]<0となるのでkは減少する。よって、どのような初期状態から出発しても、kはk*に収束する。
  • k=k*:一定である場合、dK[/dt]=d(kAL)[/dt]=(n+g)kAL となるので、K/Lは定率gで拡大し、Y/Lも収穫一定の仮定から同率で拡大。従って、ソロー・モデルでは、各変数が定率で成長するような均斉成長経路(balanced growth path)に経済が収束。これは、カルドアにより主張された経済成長に関する主要な事実に符合。

コメント 勉強途上であるのだが、先日のエントリーにも関連するのでとりあえず載せてみた。(TeXの記法はわからないでつ。ごめんなさい。)
(関連:ソロー・モデルの例)

*1:Y=AF(K(t), L(t) )となる場合は、ヒックス中立的であると言う。

*2:S=sY=I 、つまり、貯蓄量=投資量であることを前提。