田中秀臣「戦略的な不可知−生存権と自然淘汰=清算主義的メカニズム−」
(適者生存の原理から)出生者の全部が生存するわけにはいかず、また、この自然の大則がなければ人類の進化はない、というマルサス=ダーウィンの自然淘汰法則を認め、淘汰された人間に生存権を認めることは原理的に好ましくないとしつつも、一方で、運悪く偶然の所産で淘汰されるはめに陥る人を放置しておくことも経済社会の発展にとって好ましくない。社会の構成員が自然淘汰の結果敗者になったのかそうでないかを調べることには、膨大なコストがかかるため、生存権を構成員全員に認めておこう、というのが福田徳三のロジック。
他方、「マルサス=ダーウィンの自然淘汰法則を認める」という思考に対抗する別の思考として、「他者」を尊重しなければならない、とするのが立岩氏の議論。