ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

広瀬康令「金融マーケティングとは何か これがプロの戦略だ!」

コメント 金融マーケティングの「プロ」が語るこれまでの成功体験。顧客開拓・満足度向上を図る上でのノウハウがあり、これは必ずしも金融の分野に限らず参考になるものだと思う。これらの成功体験上、特に重要だと思われたのは、既存の観念にとらわれない手法の検討、粘り強い交渉の実施、コストと便益の絶えざるチェック、組織内での意識の統一と規律付け、顧客に対するフォローアップ、といった点か。また、顧客との関係という観点からみても、投資信託に対する啓蒙書の作成、チューリッヒでの初期ガン保障に係る広告など、著者の戦略が契約者にもプラスとなったとの話には好感が持てる。
 一方、金融広告には、商品のメリットのみを過大に広報し、デメリットや商品のリスクに関する開示という点には問題があるとの指摘もある。例えば、ごく短期間の高金利と中途解約できない外貨定期預金の商品性、医療保険における解約返戻金の取り扱いや責任準備金の積立方法等*1は、必ずしも十分な開示が行われていないことがしばしば指摘される。*2著者も指摘しているが、顧客と金融機関の長期的な信頼関係とこれを基礎とするマーケットの成熟が求められる。リテール金融とは、本来、長期的な視点に立ち、顧客のリスク管理を担うべき存在なのだろう。

*1:なお、著者は投資信託について、もっと多くの人に触れられてよく本当の市場拡大はこれからだ、と言うが、この点については大いに疑問。投資信託の最大の問題は、その「商品性」と販売姿勢にあるのではないか。特に米国のそれと比べると、顧客との長期的な関係の構築という観点からみて明らかに異なっており、非常に見劣りするものだと思われる。

*2:とは言え、個人の個別の状況を顧みず、完全に中立的な立場からの損得だけで金融商品を評価する「かの本」の評価には、相変わらず否定的である。