ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

守島基博「人材マネジメント入門」

人材マネジメント入門 日経文庫B76

人材マネジメント入門 日経文庫B76

 人材マネジメントとは、本書によれば、人材を活用して会社の戦略を達成し、さらに次の戦略を生み出す人材を提供すること、とされている。いわば、企業の経営方針と密接に連携した人事部の機能を意味していると考えられ、D・ウルリッチを引用しつつ、人事部のデリバラブル(提供価値)を、①戦略を達成する、②生産性の高い組織の仕組みを築く、③従業員のコミットメントとコンピテンシー(職務遂行能力・仕事の仕方)を向上させる、④組織の変革を実現する、の4つに置いている。
 本書では、このような人材マネジメントの考え方の「胆」を、人材の獲得、育成、評価、処遇、人材フロー、人材の尊重、人材の組み合わせ、という流れで追っていく。無論、「胆」であるから、人材マネジメントの具体的な手法やその事例を紹介するわけではない。その一方で、長期的な視点に立った人材の獲得・育成、内部労働市場の機能、インセンティブ・マネジメントと昇進のあり方、長期雇用と人材育成などが強調され、人事・労務管理の事例紹介記事等にはみられない、人材マネジメントの背後にある考え方により重きを置いた説明がなされている。
 日本でも、株主重視など経営のあり方が変化し、雇用の柔軟化や業績・成果主義など人材マネジメントの仕組みが変化していると指摘されるが、人材を尊重し成長を促していく上では、仕事と生活の調和など働きやすさの要素としての柔軟性を確保していく必要性についても論じられる。