ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

労働力人口変動の要因分解−構造要因抽出の試み

 06/06/05付けエントリーでは、労働力人口(就業者+失業者)の変動について、(1)人口の高年齢化に伴う効果(人口構成要因)、(2)労働力需給の変動に伴う効果(労働市場要因)に分解したグラフを掲載した。この(2)の効果は、労働市場の環境に応じ、就業意欲を喪失した者が労働市場から退出することで、労働力人口が減少する(或いはその逆の)効果であり、「就業意欲喪失効果」として一般に知られている。また、この効果は、企業における長期雇用の傾向とともに、日本の失業率変動を小さなものとする要因の一つとなっている。
 ところで、前回の試算では、(2)として抽出した効果には別の構造要因が含まれるため、純粋な「就業意欲喪失効果」とはなっていないとの批判が可能であった。そこで、性・年齢別労働力率に含まれる長期トレンドのうち、概ね、構造要因とみなすことが可能なものをHPフィルターにより抽出し、より純粋な「就業意欲喪失効果」を抽出することを試みる。性・年齢別労働力率から明らかに見て取れる構造要因は以下の3つであり、それぞれ、以下のような処置を行った。

  • 65歳以上は、年齢区分の端点にあたるため、人口構成要因にあたる効果が労働市場要因に含まれる。このため、65歳以上における長期トレンドの変動は、全て、人口構成要因に含めることとした。
  • 性労働力率は、女性の社会参加の拡大に伴い上昇する傾向にあり、25〜64歳では、長期的にみて明らかな上昇傾向がある。このため、当該区分の長期トレンドの変動は、労働市場要因とは別掲とした。
  • 男性55〜59歳では、1980年代以降1998年まで、明らかな労働力率の上昇がみられた。これは、定年延長に伴う制度的要因と考えられるため、これも労働市場要因とは別掲とした。

 他に、高学歴化が若年労働力率を引き下げる効果も考えられるが、長期的にみて明らかな低下傾向があるとみなすことはできないため、この点に関しては、特段の処置を行っていない。
 その結果、グラフは次のようになる。*1

 今回別掲とした構造要因の殆どは、女性労働力率の上昇効果であり、継続的に一定の効果を及ぼしている。ただし、労働市場要因も引き続き大きく、2002年には48万人の減少効果となるなど、「就業意欲喪失効果」が失業率の変動を平滑化させていることも無視できない。
 なお、奇しくも、discouraged wokerを含む失業率を"marginal revolutions: Is Unemployment Worse Than You Think?"が取り上げている。

(追記)今後の検討の方向性については、BI@Kのコメント欄参照。なお、コメントにある労働市場の持つ完全失業率平滑化効果については、下のグラフを参照。

 平滑化効果は、1980年を基準として、+0.8〜-0.7ポイント程度。

*1:この他、要因分解は性・年齢別に行ったものの合算(前回は、性・年齢計のデータを用いた要因分解)とした。この違いはかなり大きく、前回のグラフでは、人口構成要因の大きさを相当程度過小評価している。