ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

野口旭「グローバル経済を学ぶ」

グローバル経済を学ぶ (ちくま新書)

グローバル経済を学ぶ (ちくま新書)

コメント グローバル経済について、「確実ではあるが狭い立脚点」に基づき問題点を分析。その基本的原理に基づく主張は、以下のような、第1章の強調文字で示されるところをみれば、その簡潔なまとめとなる。

貿易不均衡とは基本的に一国全体の貯蓄と投資の不均衡の現れ
輸出と輸入は表裏一体のものであり、輸入の拡大なくしては輸出の拡大は決して実現されない
日本の産業構造の高度化は、貿易自由化を行ったからこそ可能になった
一国が貿易を行うということは、比較優位産業に特化するということであり、それは同時に、比較劣位産業を縮小させるということ
グローバリゼーションは常に、既存の経済と社会に対して、誰も拒否できないような巨大な変化を強制する
通貨危機とは端的にいえば、ある国の通貨当局が自国の為替レートを一定の目標水準に維持できなくなること。通貨危機が起きる可能性があるのは、もっぱら自国の為替レートを一定の目標水準に維持しようとしている「固定相場制」の国である

 この様な基本的原理の下に、著者は最後に「アジア通貨圏構想」に疑問を呈する。通貨危機が何故生じるかといえば、「不整合な三角形」がある中で、裁量的な金融政策と固定相場制を伴に求めるところにある。変動相場制の下で通貨危機が生じる可能性は低い。一方で、自国通貨の変動に「足枷」を嵌めることは、国内経済に犠牲を強いることになる(昭和恐慌の事例)。
 グローバリズムを批判する「向き」はあるが、こうした専門的知見をも踏まえ、その上に議論を構築していくことが必要である。なおこの問題に関しては、「純粋に疑問」(こら!たまには研究しろ!!)のコメント欄も参考になる。