ロバート・フランク“Falling Behind”(その2)
- 作者: Robert H. Frank
- 出版社/メーカー: University of California Press
- 発売日: 2007/07/02
- メディア: ペーパーバック
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コメント 第10章以降では、米国における広がる格差の要因として、ウィナー・テーク・オール社会のメカニズムが論じられる。これは、小さなパフォーマンスの差が極端に大きな報酬の差を生むことを表し、新たなテクノロジーが最も有能な者のサービスを複製可能にすること等によって生じる傾向である。格差が拡大する要因は様々なものが考えられるが、学歴、職種等どんな属性の横断面からみても、トップ層の報酬が極端に大きくなるという近年の傾向は同じである。トップ層のこれまでにない高い報酬は、また、これまでにない特に「地位財」への大きな消費を生むが、それによる幸福の高まりは僅かである。また、格差は必ずしも経済の効率性を示すわけではなく、不平等度の高い国の成長はそうでない国と較べて平均的には緩やかである。
これらから生じる公共政策への含意は、累進的消費税の提言である。累進的消費税は、累進的所得税と比べて労働インセンティブへのマイナス効果は限定的である。さらに、これは「地位財」への消費を削減し、貯蓄のインセンティブを高める効果を持つ。フランクは、「小さな政府」という考え方、特にブッシュ政権の減税路線には否定的である。国家の非効率性は脇に置いた上で、公共教育・インフラ・安全等への支出を望むか、贅沢品への支出を望むか、政治の場において選択する必要があるという。