ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

原田泰「日本国の原則」

日本国の原則―自由と民主主義を問い直す

日本国の原則―自由と民主主義を問い直す

コメント 日本は何故自身の得にはならない戦争に突き進んでいったのか−−本書では、その理由を軍のインセンティブ・システムから読み解く。高橋財政によって日本は昭和恐慌を克服したが、社会には、過剰人口問題など「日本資本主義の行き詰まり論」が蔓延していた。実際には、経済は全体として既に人手不足の状況にあったにも拘わらず、農村出身者の多い軍人の立身出世志向から軍は統制を失い、中国戦線を拡大していく。日本の軍国主義共産主義との親和性を持っており、戦争の拡大を許した背景には、自由と民主主義の弱さがあったとみる。つまり、(民主主義の好戦性には限度があり)自由と民主主義が一体となることで平和は実現される−−
 著者は「多数が少数から奪うことのできないものがあるという考えが民主主義には必要」であるとし、また「自由な民主政体であれば、必ず個人の権利を保障する法が生まれ(中略)、多数の国家が相互に独立を保ちながら交易によって結ばれあうという事態が学問と芸術を発展させる」というヒュームの言葉を引用する。明治政府は、(1)経済活動の自由化、(2)私的所有権制度の確立、(3)開国と貿易の自由化、を行い、そこから日本の大きな発展は始まる。高度経済成長も経済的自由によってもたらされたのであり、官僚主導の規制や計画によってもたらされたわけではない(それらは、むしろ1970年代以降の経済の停滞をもたらしている)。自由という原則が日本においていかに重要であったかが歴史を読み解くことによって描き出される。