ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

藤和彦「石油を読む 地政学的発想を超えて」

石油を読む―地政学的発想を超えて (日経文庫)

石油を読む―地政学的発想を超えて (日経文庫)

コメント 石油の市場は、輸送コストの低さ等の理由から、現在単一の世界市場として統合されており、しかも嘗ての石油メジャーによる国際カルテルがあった時代等とは異なり、その価格はニューヨーク・ロンドンの石油先物市場によって概ね決定される。「市場の再配分機能」により、特定輸入国に供給削減のしわ寄せがくることはかなりの程度避けられるのである。*1ところが、石油が嘗て「戦略物資」として捉えられていたという時代的な経緯から、石油専門家以外の人たちの認識によって各国の政策や外交が動く。また、純探鉱井掘削数は低下傾向にあり、商品ファンドからの市場への資金の流入により、原油価格は急激に上昇している。
 しかしながら、著者は、原油価格の動向は世界経済のパフォーマンスによって規定されるとの認識を持っており、世界経済が今後景気後退期に入れば、原油価格が暴落する可能性は十分にあるとみる。過度に地政学的リスクを強調し、石油を「戦略物資」化するという様な愚を犯さぬよう忠告している。
 石油等のエネルギーと伴に、食料についても同様の議論が起こりがちであるが、これについて同様の書籍があればまた読んでみたいところ。
(関連)

*1:イラク戦争やインド洋上のオペレーションについて、石油を「市況商品」に留めるための米国の戦略に基づくものとの見方がある。