備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

ジャン・ブリグモン「21世紀の左派に告ぐ」

 ハイエク関連で面白い文献を発見したのでメモ。「インタラクティヴ読書ノート別館の別館」経由。

 左派の場合、穏健右派の政策を主張するにとどまる限り、勝利のチャンスはない。左右を分かつのは、経済の統制という基本問題である。(中略)
 大企業の発展に伴い、生産が次第に社会化されるようになると、生産手段の私的所有の正当化は時代にそぐわなくなった。社会主義の根本的な思想は、生産過程が事実上社会化されたのなら、それ以後、生産過程の統制もまた社会化されなければならないという点にある。(中略)
 もし生産手段に加え、20世紀に起きたように情報伝達手段も少数の人々の手に握られれば、彼らは他の人々に対し、封建体制の権力と大差ない巨大な権力を持つことになる。現代において、古典派自由主義思想を真に継承しているのは、社会主義の立場を取る者たちである。今日、フランスで「自由主義者」を名乗る人々が信奉しているのは、ある種の専制政治や企業経営者でしかない。

 ここにおいて述べられる自由は、正にハイエクの言う「思弁的で合理主義的」なものに起源を持つ「新しい自由」である。その様な「自由」がもたらす帰結についても、ハイエクは明確に述べている*1ハイエクの見方に従えば、)集産主義・計画主義的な経済の運営ではない、制度・慣習に従う経済の在り方が重要なのであり、その意味において、例えば日本の長期雇用慣行も擁護される。逆に言えば、それが擁護されるのは、温情主義や団体性を確保するためではない。*2

*1:ただし、この点に関しブリグモン氏は異なる意見をお持ちのようである。

*2:この点に関しては、コミットメント・モデルが形成される上で感情の役割を強調するフランクの見方は若干異なるのかも知れない。