ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

共同通信社社会部編「沈黙のファイル 「瀬島龍三」とは何だったのか」

沈黙のファイル―「瀬島 龍三」とは何だったのか 新潮文庫

沈黙のファイル―「瀬島 龍三」とは何だったのか 新潮文庫

 生活に疲れた時はこの手の本が読みたくなる−−ということで、昭和裏面史シリーズ。瀬島龍三という人物の半生を追ったもので、そこに責任を曖昧にする日本的土壌における典型的なエリートの姿を映し出す、というもの。ただし、戦前の官僚・軍の幹部が公職等に復帰したことの背景には、共産主義の台頭という世界情勢を背景としたGHQの方針転換(「逆コース」路線)があったというのは、先日読んだ柴田「下村事件 最後の証言」等にもある様な「定説」であり、日本的土壌に対してのみ、その問題の本質を還元させるというのは一面的過ぎるかも知れない。
 また、本書では、戦後賠償ビジネス、FX商戦について等、現代にも繋がる問題の絡繰りが明らかにされる。最後の崔英沢のインタビューはなかなか興味深い。満州の避難民の話は、何度読んでも胸が痛くなる。
 日本の戦後は、政治思想、宗教や武道を背景とした結社等の魑魅魍魎が政治や外交(日米関係、中国との国交正常化等)の背後に暗躍した時代である。*11976年のロッキード事件以後は、それらの力の縮小もみられたものの、結果的にその「呪縛」は90年代にまで続いていた、というのが平成不況の背後で演じられた「裏面史」でもある。そうした時代に比べれば、今世紀に入って以降の政治や外交はかなり「清らか」なものなのではないか。小泉政権の終焉以降、この流れが今後どちらの方向に進んでいくのか、注目される必要がある。

*1:その大元の原因が先に指摘したGHQの方針転換にあるという見方も、強ち間違いではないだろう。しかし、「逆コース」路線が採られず、民政局主導が続いたとしたら、日本の現在に至る発展はなかったかも知れない。