備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

今年の10冊

 ちょっと早すぎるかなぁとは思いつつ、毎年の恒例行事です。今年は、ちょうど10冊挙げることができました。また、今年はこれまでとは違った趣向で選んでおります。以下、順不同で。

(1-1)加藤涼「現代マクロ経済学講義 動学的一般均衡モデル入門」

 何といっても、今年は本書を第1に挙げざるを得ますまい。昨年末から今年にかけて、当サイトを大いに盛り上げていただきました。一冊の本で、これ程楽しめるという経験は、もう今後はないと思われます。ブログ上の議論だけでなく、mixi方面での井戸端会議も楽しかったですねw
 なお、コメント欄で話の出た田中先生の書評はこちらで読めます。

(1-2)フリードリヒ・A・ハイエク「自由の条件」

 春秋社による新版全集の第1回配本。その歴史的意義に鑑み取り上げました。

(1-3)ジョン・マクミラン「市場を創る バザールからネット取引まで」

 市場を如何に「創る」かという点に力点が置かれた書であり、比較的エントリーへのブックマークが多かった作品。また、今年のノーベル経済学賞がメカニズム・デザイン論であったことも記念し取り上げました。

(1-4)安達誠司「円の足枷 日本経済「完全復活」への道筋」

 経済時論としては、今年、最も信頼するに値する作品だと思います。新たなリスクが顕在化している中で、「新ブレトンウッズ体制」がどのように推移するのか、見守りたいところです。

(1-5)野口旭編著「経済政策形成の研究 既得観念と経済学の相克」

 今年、最後の話題作か。「あるべき政策を実現させるには何が必要か」を追求した本ですが、多様な話題が凝縮されています。

(2-1)アラン・ド・ボトン「旅する哲学 大人のための旅行術」

 他者との相対的な比較が不幸をもたらす可能性と、その不幸からの離脱のための旅の効果を様々な形の「旅」を通して展望するという哲学エッセイ集。著者は、自分と同世代の米国の哲学者。他の本も読んでみたいのだが、アマゾン方面で翻訳に対する批判が多いのが気になる。

(2-2)サン・テグジュペリ星の王子さま

 子供への読み聞かせのために買い、不覚にも自分が読み込んでしまった本。単なる絵本を超えた深みがあります。

(3-1)佐々木昭一郎「創るということ」

 佐々木昭一郎という天才の秘密を少しだけ垣間見ることができる本。

(3-2)神奈川近代文学館編「無限大の宇宙−埴谷雄高『死霊』展」

 神奈川近代文学館における埴谷雄高展の図録。

(3-3)柴田哲孝下山事件 最後の証言 完全版」

 本書は、下山事件に関するノンフィクションですが、その範疇を超え、戦後政治・経済の分析に新たな資料を付け加えるものに仕上がっています。このような本を読むと、誰しもが戦後日本の歩んだ流れに関心を持つようになるでしょう。良きにつけ悪きにつけ、今、正に時代の清算が求められているのかも。