ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

小黒一正「人口減少の罠は脱出できるか?−人口転換論を中心に−」(PRI Discussion Paper Series)

http://www.mof.go.jp/jouhou/soken/kenkyu/ron182.pdf

 人口転換論は、Notestein(1945)、Davis(1945)らによって帰納的に確立された。また、Galor-Weil(2000)は、経済学の視点から、人口成長や技術進歩・人的資本などの関係を内生化する動学的成長マクロモデルを構築し、はじめて完全な形で人口転換論を説明した。しかし、このモデルは、出生転換をモデルに組み込んでいるものの、死亡転換は考慮されていない。
 Davis(1945)は、死亡転換こそが、出生転換をもたらす要因の中で中心を占めると説明する。この論文では、こうした立場から、Galor-Weil(2000)のモデルに死亡転換を組み込み、出生率の低下や人口減少の分析を行っている。このモデル(技術ストック、効率労働、土地からなる生産関数と、子供の時間的コスト*1による予算制約を考慮し、子供を消費財とみなす効用関数からなる一般均衡モデル)の含意によれば、(1)仮に技術進歩が人口規模に依存しないならば、現在我が国で進行している人口減少は恒常化する可能性が高く、(2)技術進歩が人口規模に依存するとしても、今後とも長寿化が進展するならば、人口減少が継続する可能性が高い。

 また、OECDのデータを用いた推計では、人口規模が技術進歩に与える影響(プラスの相関)と、長寿化が出生数に与える影響(マイナスの相関)は、ともに有意となる。

(参考)

*1:教育水準や出産・育児費など。