ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

河野稠果「人口学への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか」(3)

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

社会問題を「科学」で考えることの重要性

 人口学の碩学による、網羅的な概説。生命表出生率、人口推計などの手法や、人口学のグランド・セオリーであり、近代的経済発展、都市化、工業化にともない、多産多死から少産少死へと至るという人口転換論について論じられている。
 人口の変動には出生率の低下が大きな影響を及ぼすが、その変動過程は複雑であり、以前は、経済学の立場からは理解しがたいものとされていた。近年、出生率に対する経済・社会的な影響を説明する精緻な理論も出ているが、人口の将来推計に応用できるまでには至っていない。とはいえ、経済学による科学的な分析には耳を傾けるべきものがあるとし、以下のように論じるところには共感を覚える。現代社会では、社会問題は、基本、サイエンスで考える必要があるのだ。

 すべての人間行動が経済学の原理で動くものとして分析する方法は、人間はそのように合理的な動物ではないとして、往々にして批判の対象となる。しかし科学的研究としては、事象をまず合理主義的枠組みで考え、それにあてはまらない条件はどういうものなのか、どうして現実はうまくあてはまらないのかという順序で物事を考えるやり方が議論を進めやすくし、学問として発展できる状況に導く。はじめから反合理主義的な事例に取り組み、その要因を考えていくと、不必要に事態が錯綜し、泥沼に陥ってしまう。

 なお、人口減少社会に関する終章については、経済の供給面だけではなく、需要面にも目を向ける必要があるのではないか。その過程において、失業が生じる懸念についても留意しておくべきであろう。