名目成長率・金利論争について
先のエントリーに関連して、バランスを期すため、2006年2月1日の諮問会議議事要旨*1より、名目成長率と金利に関する両者の見方を整理しておく。
竹中議員:
- (1)長期的なファクトとしての名目成長率と国債金利の関係、(2)理論的に確立された考え方、(3)両者の関係が当面どうなっていくか、の3点を考える必要がある。
- マンキューによれば、歴史的事実として、米国では名目成長率が国債金利を上回っており、ミシュキンによれば、他の主要国についても、名目成長率の方が金利より高い。日本においても、1966 年から2003 年までの平均でみると、名目成長率は金利を上回る。
- (ソロー成長モデルでは、)いわゆる長期均衡の定常状態では名目金利が名目成長率を上回る。しかし、この名目金利は、民間の金利であって、国債金利ではない。私の知る限り、いわゆる成長理論において、名目成長率と国債金利の関係に確立された考え方はない。そもそも成長理論でいう定常状態は、永遠に来ない。
- 当面は、名目成長率も国債金利も、高くなったり低くなったりする。長期的には、名目成長率の方が高かった。国民にとってできるだけ有利なよう、成長率を高め、国債金利をできるだけ低くする努力をすることに帰結する。
吉川議員:
- 名目成長率が高まれば名目金利も上がる。長期金利はマーケットで決まるもの。
- 長期の傾向では、英国だと、逆に金利の方が高くなる。多くの国で、国債市場で規制の厳しい時期があり、例えば、日本の場合、戦後かなり遅くまで規制市場であった。民間のシンジケート等が国債を保有して、国債をマーケットで売却することを禁じていた時代もあった。規制金利でそれが低くなっていた時期がかなりあり、そうした時期を参考にするのは適当ではない。
- ソロー成長モデルでは、民間の金利を考えており、民間の金利は国債の金利よりも通常高いというのは事実だが、それはリスクプレミアムによるもの。ソロー・モデルは抽象的であり、リスクは存在しない。国債の金利といえども、結局は民間の資本の限界生産性から決まる。今から200 年前、デビッド・リカードは金利は資本の限界生産力で決まると一言で言ったが、そのときの金利は、もちろん国債金利を指していた。定常状態は永遠に実現しない、というが、資本があり余ったいわゆる「黄金律」の水準より資本・労働比率が低い限り非定常状態でも、金利は成長率よりも高くなる。
竹中議員:
*1:「マンキュー、サンキュー」事件が起きたことで知られる諮問会議。