ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

フリードリヒ・A・ハイエク「法と立法と自由[1] ルールと秩序」(2)

法と立法と自由I ハイエク全集 1-8 新版

法と立法と自由I ハイエク全集 1-8 新版

第4章 法概念の変遷

  • 施行された行動ルールという意味での法が社会と時を同じくして生まれたことは疑いない。全ての法が立法者の自由な発明の産物で、そうあることができ、そうあるべきだということは事実に反し、それは「設計主義的合理主義」の間違った所産。
  • あるグループの構成員全てが特定の方法で特定のことを行う理由は、その方法でのみ彼らが意図することを達成できるからではなく、その方法で行為するときにのみグループの秩序が維持され、それによって成功の可能性が生じるためであることが多い。また、そのことによってグループは存続してきた。普遍的な行動ルールの発達は部族という組織化されたコミュニティの内部で始まったのではなく、未開人が同じような仕方でおかえしがもらえることを期待して自分の部族の境界線に贈り物を置いていったときの最初の無言の物々交換に始まった。
  • 自生的成長過程はそれ自身の力では抜け出せない、または少なくとも速やかに抜け出せない行き詰まりに陥ることがある。司法的展開の過程は漸進的であり、また、判事が以前の判決によって生み出された合理的期待を裏切るようでは、その機能を果たしているとはいえない。将来においてのみ適用される新しいルールを布告することで、特定ルールを急激に変える必要の理由の1つは、恐らく、法の展開が特定階級の構成員の手中にあったこと。
  • 立法が法の唯一の源泉であるという概念から、(1)より高位の立法者を無限に必要とすることから、その権力を制限することのできない最高の立法者がいるに違いないという信念、(2)その最高の立法者の制定したものは何であれ法であり、彼の意志を表現するもののみが法であるとする信念、が引き出される。立法者の権力は、一定の属性に関する共通意見に依存し、こうした属性を持つ場合にのみ支持を得る。意見の支持がなくなれば、最強の独裁政権でも崩壊。

第5章 ノモス−自由の法

  • たいていの場合、紛争行為が生じた時点では、個々人が何をしたのか、なぜそうしたのかを当局は知らず、この意味で、裁判官は自生的秩序の一制度。法は権威に由来するという考えを逆転し、すべての権威を法に由来すると考えるならば、その方が真実に近い。行為の秩序を形成するための条件となるのは実際にルールを守ること。裁判官に特徴的な姿勢は、民間人が期待すべき「合法的」理由を持つものに彼が関連するという事情から生じる。
  • 「他者に対する行為」と自生的秩序(略)。絶えず変化を続け、何人かの個人が新事実を頻繁に発見し、この新知識を彼らに利用させたいと我々が望む外的環境においては、すべての期待を保護することは明らかに不可能。行動ルールは、特定の具体的な事態を決定することではなく、構成員に知られている特定事項から確度の高い期待を引き出すことを可能にする抽象的秩序を決定することによって、確実性を高める。期待一般が実現される可能性を最大化するという課題のため、特定の個人達だけが自由にすることを許され他の全ての人はその制御から排除される対象の領域を指定すること。
  • 財産の認識は、最も原始的な文化の興隆に先行。我々が文明とみなすものは、異なる個人の行動計画がたいてい成功するように相互に調整されるようになるという事実に依存しており、この状態は、各個人が私有財産を1つの価値として受容するならばその時にのみ達成される。
  • 特定の予見可能な出来事の予想においては、法はどのような目的にも役立たないが、様々な人達の数知れない異なる目的には役立つ。それは全体としては誰にも知られていない多くの異なった目的のための手段を提供する。

第6章 テシス−立法の法

  • 手続に関する法と裁判所という組織をつくりあげる法は、正しい行動ルールからなるのではなく、組織のルールからなる。議会制度が起こったのは、租税への同意を取り付ける必要性のため。
  • 政府組織の法は、どんな種類の行動が一般的に正しいかを定義するルールという意味での法ではなく、特定の官僚や機関がなすように求められていることについての指示で構成される。自由社会においては、私的市民はこれらの手段には含まれないが、政府組織の規制が正しい行動ルールと同じ種類のルールと広くみなされているとすれば、組織の法が正しい行動ルールを規定する権力を持つ同じ権威によってつくられているという事情による。
  • 「公法は移り変わるが私法は継続する」。革命や征服の結果、政府の全構造が変化しても、正しい行動ルールの、つまり民法と刑法の大部分は依然として実施されるであろう。
  • 正義は種々の取引の結果ではなく、取引自体が公正であるか否かだけを問題にする。正しい行動ルールは、ある国において、労働生産性が低いと(完全雇用に対応する)賃金は非常に低くなる状況をもたらし、一部にのみ高い賃金が保障されているとそのために他の人達の雇用機会がなくなってしまうという事実を変えることはできない。「社会的」立法の3つの種類(略)。