ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

切通理作「山田洋次の〈世界〉─幻風景を追って」

山田洋次の<世界> (ちくま新書)

山田洋次の<世界> (ちくま新書)

山田洋次映画の「深意」に迫る

 多くの資料を通して、山田洋次映画の「深意」に輪郭を与え、巷での解釈に変更を迫るような内容。
 本書では、山田にとっての「リアリズム」を「儒教的な浪花節べったりな日本人的真性に距離を持っているということ」とし、それは落語の本質だとする。寅さんにしても、柴又にしても、非現実的なもの、ワンダーランドであり、諧謔的な世界である。しかし、そこには「生きる人間の本質的なリアル」を射抜くものがあるとする。労働や人生とは、文字通り「無意味」なものである。結論もなければ終わりもないということ自体が近代社会の本質なのである。
 「怒り」に捕らわれた人間は、「意味や秩序が支配するこの世界に自分が規定される」が、その世界から解放され「絶対自由」を手に入れることで、幸福を感じ取れる場所に人は導かれる。