ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

ジョージ・エインズリー「誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか」(2)

誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか

誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか

 積み残しの第9章以降および訳者解説をようやく読了。今思えば、訳者解説を読んだ後に本文を読めばよかったと思う。

 双曲線割引の状況の下、目先の選択肢の誘惑に打ち勝つための心の操作(個人的なルールなど)は、インセンティブを、長期的にみてより高い報酬にあわせることができる。その成功の可否は、自己コントロール力、意志力、つまりは、異時点間の交渉において合理性を保つ力の強さに依存するだろう。だが、意志力には副作用もある。定められた個人的なルールの硬直化、ルールが破られた場合にその根拠であった長期的報酬を得る見通しが低下することなど。自己コントロールの効率を高めすぎると、最長期の利益には貢献しないような状況を明らかにしてしまい、意志というのは、将来報酬の双曲割引が創り出す衝動性に対する限定的な解決策に過ぎないことになる。さらには、合理性の高まりによって「希少性」が低下すれば、報酬の価値が低下する。
 習慣化によって感動が薄れる傾向は、「環境を探検し続ける」ような動機を生む。合理的なものへの適応性が高ければ、人間は、一度形成された報酬獲得行動を変えることがなくなる。このことは、双曲割引への適応性の高さという事実(仮説)を進化論的に説明することへの道筋となる。