ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

育児休業制度は、女性の結婚・出産行動に効果がないといえるのか?

マクロデータによる分析

 先日のワーク・ライフ・バランスに関するエントリーでは、次のように記載した。

 育児休業制度を利用して就業を継続した妻は増加しているが、就業継続者そのものは、1980年代後半以降、大きく変化していない(ほぼ25%前後)。

 これは、国立社会保障・人口問題研究所「第13回出生動向調査」の次のグラフを利用したものである。

 ここから「育児休業制度を利用して就業を継続した妻は増加しているものの、就業継続者そのものは1980年代後半以降、25%前後で大きく変化はしていない」ことがわかる。つまり、マクロのデータをみる限り、育児休業制度を利用して就業を継続しているのは、仮に育児休業制度がなかったとしても、就業を継続する意志を持っていた者である可能性が高いのである。
 こうした見方に立つと、育児休業制度は、働く女性にとってのメリットにはなっているものの、出産後も継続して就業をする者を増やすことに寄与してはいない、ということになる。また、育児休業制度があろうがなかろうが、女性の出産後の就業状態への影響はないのだから、育児休業制度があるから結婚・出産しようとする者はそれほど多いわけではない、とも考えられる。

ミクロデータによる分析

 では、育児休業制度の導入は、結婚や出産を拡大することに効果がなかったと言い切ることは出来るのだろうか。マクロデータの分析では、それが主たる効果を持たなかった可能性が高いことを示唆する。
 その一方で、企業の従業員を対象とする調査の調査票(マイクロ・データ)にさかのぼり、一般化線型モデルによる回帰分析を行うことによって、様々な属性をコントロールした上で、育児休業制度の有無が結婚・出産後の就業の継続にどのような効果をもたらしたのか、より厳密な分析をすることもできる。ここでは、JILPT「仕事と生活─体系的両立支援の構築に向けて」より、第2部第1章「未婚期の雇用環境と女性の結婚・出産─初職勤務先に着目して─」の分析結果を紹介する。

 このデータの示す含意をまとめると、次のようになる。

  • 結婚・出産の有無に対し、「均等法前世代」では、学歴のみ有意な(マイナスの)効果を持ち、高学歴化は未婚化の要因になっている。その一方で、「均等法後世代」では、高学歴化は未婚化の要因とはなっていない。
  • 「均等法後世代」では、学校から初職への移行期に「1年以上無職」の経験は、有意に未婚化の要因となっており、(1)最初の勤務先が正規雇用、(2)勤務先に育児休業制度がある、は、有意に結婚・出産することの要因となっている。

 つまり、若いコーホートでは、育児休業制度があることは、結婚・出産を拡大させる効果を持つということである。育児休業制度は、マクロの結婚・出産行動に大きな影響を及ぼすほどの効果を持つものではないが、個々の従業員の行動には、一定の影響を持つものであったことがわかるのである。*1
 なお、育児休業制度は、働く女性の厚生の向上に効果があり、結婚・出産行動に大きな影響はないとはいえ、それ自体、十分意義を持つものであることは指摘しておくべきであろう。

*1:先日のワーク・ライフ・バランスに関するエントリーでは、この点を注記で留保している。