ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

速水融「歴史人口学でみた日本」

歴史人口学で見た日本 (文春新書)

歴史人口学で見た日本 (文春新書)

 「宗門改帳」という江戸期の資料をもとに、世帯別の人口を生態的、動態的に分析することで、経済や社会の動向を憶測するという興味深い研究に関する本。個々の人間のミクロのデータから、社会と歴史のマクロの動きを跡づける。この、歴史人口学という学問を紹介するとともに、著者自身の研究史を紹介するものにもなっている。
 著者の研究によれば、17世紀の日本では大きな生産性革命が生じ、それは、「合同家族世帯」が「直系家族」や「核家族」へと変わることによって、農業の生産が飛躍的に伸びたことによるとしている。また、人口一人あたりの家畜の数が縮小し、人力による作業が増加するが、それによって生産性はむしろ向上しており、通常の経済の発展(資本集約・労働節約による生産性の向上)とは異なる動きがみられるとのこと。他にも、都市部での死亡率は農村よりも高かったことなど、一般の歴史では明らかにされることのない事実の指摘が目を引く。

(参考エントリー)