備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

ベン・バーナンキ「リフレと金融政策」

リフレと金融政策

リフレと金融政策

 主としてデフレと、それに対する中央銀行のみが執りうる措置(非伝統的金融政策)、および政府との連携のもとに実施可能な措置に関する講演を中心とした書。日本の金融政策(当時)に対しては、物価水準目標(物価水準を、過去数年間のデフレの代わりに、例えば、年率1%の緩やかなインフレによって到達していたであろう水準まで回復させること約束する)と、財政当局との連携による「ボンド・コンバージョン」、さらには減税と日銀による買い入れ(実質的な通貨発行益による減税)を提唱している。同じ最適制御の理論を使いながら、金融政策と弾道計算には大きな違いがあることを取り上げ、そこから金融政策におけるコミュニケーションの重要性を指摘するなど、巧みな比喩により、専門用語だけに頼らないわかりやすい説明が心がけられている。インフレ目標政策については、制約下の裁量という政策枠組みと、インフレ予想をつなぎとめるコミュニケーション戦略という2つの要素によって説明する。
 経済がデフレに陥る場合にも、「中央銀行の弾薬は尽きない」としているが、これは、FRB理事としてデフレに対し断固として立ち向かうという決意表明とも受け取ることができる。減税と日銀による買い入れについては、訳者解説にあるように、本質的には「ヘリコプター・マネー」(フリードマン)と同じであるが、インフレ目標政策による通貨管理と組み合わされている点で、単なる「インフレ税」論者とは一線を画す。もちろん、「困ったらいつでもヘリコプターでお金をばらまけばいい」などと言っているわけではない。

(参考)