ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

大竹先生の論説

http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2009/01/post-effd.html#more

 企業が蓄積した内部留保を活用して雇用を維持するべきだ、という議論は、ここ数週間の間によくみられるようになりました。雇用の維持によって、人的資本の毀損を防ぎ、生産性の向上につながるのであれば、この議論に異議を差しはさむ余地はありません。(あるいは、生産性の向上にはつながらなくとも、企業の社会的責任という観点から、それを肯定することは可能なのかも知れません。)また、雇用の維持が生産性の向上につながる蓋然性も、高いものだといえるでしょう。ただし、雇用の維持をうったえる「対象」はいったい何なのか、というところが、これまでのところ十分に整理されていないように感じられます。
 少なくとも株式会社を前提とすれば、その対象は、企業経営者ではあり得ません。企業経営者には、企業が蓄積した内部留保を雇用の維持に活用する権限はありません。うったえるべき対象は、株主を含めた企業(法人)の総体、ということになるでしょう。問題となるのは、法人はあくまで擬制であって、特定の人間主体ではないことです。つまり、このようなうったえに対して、応える相手がいないということになります。
 政策的な立場に立てば、企業内に蓄積された剰余を、人的資本を含む資本の蓄積に向かうようなインセンティブをつくるよう、マクロ経済政策を運営することが、むしろあるべき方向性であるように感じられます。