備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

2008年12月データによるNAIRUの再推計−結果は3.51〜3.61%

(過去のエントリー)

 「インフレを加速させない失業率」(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment: NAIRU)は、おおむね自然失業率に相当するものとみなされるもので、本来、それほど大きく変化するものではありませんが、2008年12月までのデータが出そろったので、再度推計を行います。
 具体的な推計方法は、過去のエントリーをご参照ください。前回の推計方法と変えた点は、参照するデータ(修正コアCPI、完全失業率、価格ショック指数)の作成手順を若干変更したこと、四半期データを用いたことです。参照データを用いたフィリップス・カーブは、下図のようになります。

推計モデル

 前提となる期待修正フィリップス・カーブは、下のように表現されます。


  
π:修正コアCPI季調前年比、U:完全失業率、U*:NAIRU、DSH:価格ショック指数前年比

 実際には、p=1からp=4まで4次までの系列相関を処理する自己回帰推定によって行いました。

推計結果

 推計の結果、固定NAIRUは3.51〜3.52%となりました。なお、AICが最も小さくなるp=1の結果は下図の通りです。

 可変NAIRUについては、上記の推計結果を用いて前回と同じ推計を行いました。その結果、1985年以降の平均で3.61%となります。なお、可変NAIRUの推移は、下図の通りです。

 以上の推計により、日本のNAIRUは、おおむね3.51〜3.61%となることがわかります。2002年以降の景気回復過程における完全失業率は、本推計に用いたデータでは3.78%(2007年第2四半期)が最も低い水準となっています。この水準では、まだNAIRUに達したとはいいきれず、その結果として、2002年以降の景気回復は賃金や物価の上昇にはつながらなかったと指摘することができるように思われます。