ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

オークン法則の再推計

完全失業率予測に関する図表について、政府経済見通しの数値の誤りを修正し、日銀「経済・物価情勢の展望」の最新値を反映しました。ご指摘いただいたsheepmanさんに感謝します(02/12/09)。

 前回は、1990年以降のデータによりオークン法則を導き、日銀の見通しにより、今後の失業率は既往最高の5%台半ばにまで達する可能性があることを指摘しました。

http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20090131/1233416343

また、その後の経済指標をみると鉱工業生産指数の大きな低下があり、これを加味すれば、完全失業率は既往最高値をも優に超える可能性があることも指摘しました。

http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20081110/1226324292

 今回は、オークン法則の推計方法を見直すとともに、各種機関から提供されている実質経済成長率の見通しをもとに、今後の失業率の推移を予測することにします。まず、完全失業率(前年差)と実質国内総生産(季調前年比)の相関関係は、下図のようになります。

これによると、相関関係には、1997年半ば頃をはさんで、違いがみられることがわかります。Quandt LR-Testによれば、1997年第2四半期に構造変化が検出されることから、期間を2つに分割し、前回同様、コクラン・オーカット法により推計を行いました。その結果は、下図のようになります。

 その上で、後半の推計結果に各種機関から提供されている経済成長率の予測値をあてはめると、下のようになります。

(注)FY2008の完全失業率4.20は、「実績」ではなく政府経済見通しの実績見込み値です。

2009年度の完全失業率は、政府経済見通しにあるようにおおむね4.7%、また、2010年度の完全失業率は、OECDの経済成長率の予測値をあてはめて、おおむね4.9%というのが妥当な水準となりそうです。
 ただし、このところの鉱工業生産指数の大きな低下、製造業を中心とした雇用調整の動きなどを考えると、この水準を超える可能性は十分に考えられます。この予測は、経済成長率をどのようにみるかによるので、足許の経済指標を考慮すれば成長率の見通しも変わるため、先行きの動向を考える上では留意する必要があります。

(追記)なお、現在のところまだ資料は公表されていないようですが、1月の日銀「経済・物価情勢の展望」(中間評価)によれば、2009年度の経済成長率は2.0%減となる見込みであり、この数値を当てはめると、2009年度の完全失業率は5%台半ばにまで達することになります。また、高橋洋一教授が指摘しているように、2009年度の経済成長率が3〜4%減となるのであれば、完全失業率は6%を超える可能性もでてきます。

 つぎに、超過失業率(完全失業率のうち、インフレを加速させない失業率(NAIRU)を超過した分)とインフレ率の関係をみると、下図のようになります。

インフレ率は、2008年以降、原油高等の影響によってトレンドから大きく外れた動きをしています。これらを考慮せずに、これまでのトレンドをもとに考えれば、インフレ率を1%減らすために必要な完全失業率のポイント差である犠牲率は、おおむね1%ポイントとなります。
 完全失業率は、2009年に0.5%ポイント程度悪化し4%台半ばになると予想されるので、超過失業率は1%、インフレ率はゼロからマイナス1%の間で推移するものと考えられます。