ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

オークン法則による完全失業率の見通し──実質GDP成長率改訂の反映

 既に報道されているように、内閣府による平成21年度政府経済見通し暫定試算*1と、日銀の経済・物価情勢の展望(2009年4月)*2が公表され、2009年度の実質GDP成長率がともに改訂されました。
 実質GDP成長率とオークン法則によって、2009年度の完全失業率を推計することができますが、前回の推計によれば、1997年第4四半期以降のオークン係数は2.574、つまり、実質GDP成長率1%の上昇(低下)は、完全失業率約0.4ポイントの改善(悪化)となります。

 今回の改訂の結果を反映した完全失業率の予測値は、次のようになります。

(注)FY2008の完全失業率4.10は、「実績」ではなく政府経済見通しの実績見込み値です。
 2009年度の完全失業率は、政府経済見通しによれば約5.9%、展望レポートによれば約5.8%となり、月次ベースで考えればほぼ確実に6%を超えることが見込まれます。
 しかしながら、先日のエントリーにおいて指摘したように、企業の雇用維持努力や医療、福祉業における雇用の増加がみられており、これらの効果が今後も継続すると考えれば、完全失業率の悪化は抑制される可能性もあります。

その一方で、2008年度の実績見込みは、2007年までのデータに基づく推計値よりも1.4%程度低くなっています。完全失業率は実際の経済情勢に遅行して推移するのが一般的であり、この完全失業率抑制分は、遅れて実現される可能性もあります。
 ちなみに、政府経済見通しによる2009年度の完全失業率は5.2%であり、オークン法則の関係式による結果よりも0.7ポイント程度低くなっています。これを、これまでの抑制分とあわせると2.1%ポイント程度になります。
 わたしは、完全失業率の悪化は今後も引き続き抑制され、政府経済見通しに近い水準で推移する可能性も高いものだと考えていますが、今後1〜2年以内に自律的な需要の創出が実現できないと、その見方もくつがえされることになるでしょう。また、自律的な需要の創出が実現でき、景気がゆるやかな回復過程に移行したとしても、労働市場がタイト化することは、しばらくは期待できないように思われます。*3
 なお、マイナス3%強という2009年度の実質GDP成長率の見通しについては、2008年度第4四半期の実質GDPの低下にともない2009年度の「発射台」(ゲタ)が大きく低下したこと、今回の経済対策の規模などを考慮すれば、おおむね妥当なものといえるでしょう。

*1:http://www5.cao.go.jp/keizai1/2009/0427zantei.pdf

*2:http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0904a.pdf

*3:これは、デフレが当分の間続くことを意味します。また、非正規雇用の増加などこれまで指摘されてきた日本の労働市場の問題については、経済成長によって改善できる部分が多く残されており、このことはこのブログでもたびたび指摘してきましたが、今般の経済危機によって、その余地はかなり縮小してしまった可能性があります。