ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

「デフレ」の意味するもの−補足

 08/05/09付けエントリーid:himaginaryさんからトラックバックをいただきました。

http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20090819/behold_nominal_gdp

この中に「名目GDPを国内需要デフレーターで割ると、実質GDIにほぼ等しくなる」との指摘があります。これを数式によって展開すると

交易利得≒(名目GDP/P)−(名目GDP/PD+F
国内需要デフレーター、 PD+F:GDPデフレーター

となります。交易利得(=実質GDI―実質GDP)は、輸出入価格の差による所得の実質移転額であり、例えば、輸入物価が高騰しP>PD+Fという状況になった場合、交易利得はマイナスになります。
 id:himaginaryさんは、ここからさらに「国内需要デフレーターがGDPデフレーターよりも実需に即していたと主張することは、名目GDPを需要ベースに引き直した指標として実質GDPよりは実質GDIの方が適切だったと主張することに等しい」と指摘されます。この点は、正直、盲点でした。と同時に、認識のフレームに違いがあることもわかりました。
 以下は、自分の認識フレームにもとづいて表現します。それに則していえば、経済の貨幣的側面に相当するのは名目GDPであり、経済の実需、つまり数量的側面は、やはり(実質GDIではなく)実質GDPということになります。経済の実需的側面である実質GDPは、物価でデフレートすれば、本来は経済の貨幣的側面である名目GDPに対応しますが、現在の状況はその間に乖離が生じており、その原因となっているのが交易利得のマイナスです。よって、経済の実需的側面である実質GDPに交易利得を加え、物価(国内需要デフレーター)を乗じれば、経済の貨幣的側面である名目GDPと一致することになります。これまで何度か紹介してきた賃上げ率の寄与度分解のグラフも、基本的には、この認識フレームに基づいています。
 このような認識フレームに則して考えると、完全失業率など経済の実需的側面に対応させるのは、やはり実質GDPが適当である、といえるでしょう。むろん、このような認識フレームが正しいかどうか、という論点は、別途検証が必要ですが。

 ここで参考までに、2001年以降の名目GDP、実質GDP、実質GDIのそれぞれの前年比の推移をみてみます。

 これによれば、実質GDPと実質GDIの乖離は2004年頃から次第に大きくなり、このあたりから、交易利得は大きく低下したことがわかります。さらに、2004年の後半から、実質GDIの動きは名目GDPの動きにかなり近くなります。これは、この間の実質・名目GDP間の乖離は、おおむね、国内的要因ではなく交易条件によってもたらされたことを意味します。ただし、2009年になると、国内需要デフレーターは急速に低下し、実質GDIと名目GDPの動きも異なったものとなります。