ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

所得と自殺率の相関性(補足・その2)

 前回までのエントリーにおいて残された、自殺率を説明する所得水準、高齢化以外の要因を探るため、今回は、説明変数に有効求人倍率、年間日照時間、ソーシャル・キャピタルの水準(SC指数)を加えたモデルで回帰分析を試みる。被説明変数は、前回同様、クロスセクション型年齢調整自殺率とし、年間日照時間は気象庁気象庁年報」による気象官署所在地別の年間日照時間(2005年)、SC指数は日本総研『日本のソーシャル・キャピタルと政策』において試算された地域別SC総合指数(2007年)を天下り的に利用した。モデル1では、説明変数を1人あたり雇用者報酬、有効求人倍率のみとし、モデル2ではこれに年間日照時間を、モデル3ではさらにSC指数を加えて推計している。

 結果をみると、まず、有効求人倍率は1人あたり雇用者報酬とともに自殺率と有意に関係している。1人あたり雇用者報酬は雇用者に関係する指標である一方、有効求人倍率労働力人口全体に関係する指標であり、自殺率には、後者の雇用の問題がより強い影響を与えている可能性がある。
 年間日照時間は説明変数としての有意性があり、自殺率の水準に関係している。これについては、うつ病と日照時間に関係があり、日照時間が減少するとうつ病が発生しやすくなることから一般的には説明されているようである。
 一方、SC指数は10%水準でみても有意性がなく、自殺率との関係は必ずしも強くない。

 最後に、これら4つの指標から計測される標準的な自殺率と、現実の自殺率との乖離を都道府県別に計算した。

 結果をみると、青森、高知では上方への乖離が大きくなり、標準的な自殺率よりも7.6〜7.5人(人口10万人あたりの)自殺者が多くなる。一方、滋賀では、標準的な自殺率よりも9.1人自殺者が少なくなる。
 秋田は、2.4人程度標準的な自殺率よりも自殺者が多くなっているが、おおむね、説明変数としてとりあげた4つの要素によって自殺率の水準を説明することができる。
 秋田県では、うつ病対策や各種啓発活動など、さまざまな自殺対策が推進されており*1、実際に、自殺予防対策モデル事業によって、自殺率の低下に一定の成果をあげている。もし、今後、上述の乖離指標が低下していけば、こうした対策の成果であると指摘することができるだろう。*2ただし一方で、これは地方自治体等にできることとしては限られるかもしれないが、雇用や所得の改善が自殺率を引き下げるにあたってのより重要な要素であるということもできる。

*1:http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1216026429199/index.html

*2:すなわち、この指標を改良していけば、自殺対策のパフォーマンス評価に活用することが可能になる。